特集 地球温暖化 ―人類はこの困難に立ち向かえるのか?

世界 2007 年 9 月号
岩波書店
刊行:2007/09/01 (実際は 2006/08/09 ころ)
名大生協で購入
読了日:2007/09/08

IPCC 第4次報告が出てきているのを期に、以下の7つの記事による 特集が組まれている。 地球温暖化問題はいろいろな意味で難しい問題で、なかなかこれといった 解決策がない。本当のことを言えば、いかに「清く貧しく」生きられるかという 問題なんだと思うけれど、そういうとらえ方をした論説は上の記事にはなかった。 雑誌「世界」だけあって、政治・行政・企業などの批判をした論説が多い。 問題はそれだけではないとも思う一方で、相変わらず政府は支離滅裂だと いうことを再認識してしまう。二酸化炭素削減の施策がほとんどないというのに、 「美しい星50」とやらで、二酸化炭素半減を謳うのはいったい どういう神経をしているのか疑う。せめて炭素税くらい導入すれば、本気かな と思うのだが、そういう様子は全くない。

(UK)は、地球温暖化問題の経済方面からの概説。エネルギー税の使途を 環境目的にすると良いという提言で結ばれている。(AJ)では、 反温暖化対策論に対する反論がまとめられている。しかし、私から見ると ちゃんとした反論になっていないものもあってちょっと苦しい。表面的な論理 だけで勝負しているように見える。本質的な温暖化対策が今のところ 存在しないので、しかたのないところではあるが、もうちょっと醒めた目で 見たらどうかという感じがする。(MA)は、温暖化の科学を どの程度の確からしさをもって受け止めるべきであるかということの きわめて中庸な解説。馬鹿げた極論に振り回されないために、良い読み物である。 (IS)は、企業アンケートを元に、今のままでは日本では温室効果ガス削減が できないことを論じている。炭素税や排出権取引の導入が必要であるとしている。 (MI)では、企業の温室効果ガス排出量がなかなか公表されてこなかった話が 書かれている。著者らの努力で 2005 年に法改正がなされ、 ようやく公表されることになったそうだ。2005 年になってようやくこういう 基礎データが出るようになったということは、政府がいかに本気でなかったかが わかる。(IT)では、日本では自然エネルギーの発展が政策によりいじめられていて、 ヨーロッパからはまるで立ち後れていることが書かれている。 自然エネルギーだけでは、化石燃料を代替できはしないけれども、 いじめるのはひどすぎると思った。(OK)には、安倍首相の「美しい星50」の 内容が経団連の主張の丸呑みでいかに空疎かが書かれている。