この本は、「ボナンザ」を作った保木邦仁と竜王渡辺明が交互に2章ずつを 担当して書き、間に対談を入れてあるという作りになっている。 両者それぞれ独特の個性のある人で、その個性を楽しめるので、 1日もかからずに読み終えてしまった。私は、将棋もコンピュータゲームも あまり知らないので、内容的によくわからない点もあったが、それを 気にしないことにすれば十分に楽しめる。
「ボナンザ」の特徴は、全幅探索をすることと、過去の棋譜を機械学習して 評価関数の大量のパラメータを最適化していることである。これによって、 将棋が強くなくてもけっこう強いプログラムを作ることができるようになった。 「ボナンザ」の別の特徴として、終盤に詰み専用ルーチンを用いるということを あえてしていないということがある。作者の保木氏は、 王手の連続が最善かどうか分からないから、全幅探索の方が良いと 考えているとのことである。ただ、そのせいかどうかわからないが、 ボナンザVS竜王の公開対局では、ボナンザは終盤で竜王に読み負けたために 敗戦した。とはいえ、ボナンザの敗着のところでの最善手は、 一直線の読みではなくて勝負を先延ばしにするような手だったそうで、 そういう評価関数が変わりにくい手はなかなかプログラムが難しそうである。
保木氏の目標は、もちろん人間を超えるソフトを作ることだそうだ。 一方で、竜王の渡辺氏は、プロの勝負師である以上、 そう簡単にはソフトは人間を超えられないと信じている。 今後の将棋ソフトの発展には、しばらくわくわくさせられるだろう。