パーソナリティ障害

岡田尊司著
PHP 新書 304、PHP 研究所
刊行:2004/07/02
名大生協で購入
読了日:2007/04/22

この人の同じ問題に関する本は すでに前に読んでおり、 こちらが内容的にとくに新しいわけでもない。が、まあ復習のために 目先を変えて読んでみた。大学のようにいろいろな人がいるところだと、 パーソナリティ障害について知っておくことはそれなりに役に立つのである。

パーソナリティ障害とは、いわゆる「困った人」のことである。 いろいろな種類のものがあるが、著者は2つの共通する特徴を挙げている (p.34)。 ひとつは、優越感であれ劣等感であれ「自分に強いこだわりを持っている」こと、 二つ目は、「とても傷つきやすい」ことである。それらのことによって、 結果的に対等で信頼し合える人間関係を築くことが非常に困難になっている。 それが「困った人」であるということになる。

この本は、基本的には、アメリカ精神医学会の DSM-IV という 分類判断基準に基づいて、それぞれの類型の特徴とか育った背景とか、 そういう人との接し方を述べている。

もっとも、パーソナリティ障害の程度はさまざまで、「普通の人」との境目は はっきりしているわけではない。「普通の人」でもある程度は パーソナリティ障害的傾向を持っている。だから、DSM-IV のように 類型化することには好ましくないとする考えもあるようだ (たとえば「人格障害論の虚像」という本ではそういう考えが書かれているらしい)。 しかし、それは基本的には使い方の問題であって、 簡単にレッテル貼りをしないように気をつけさえすれば良い。

いちおう類型化してあるのは、いくつかの意味でたぶん役に立つ。 ひとつは、実際にそういう傾向にある人と接することがあるときに便利である。 何となく心の準備ができるからである。 さらに、「普通の人」が持っているパーソナリティの傾向を理解する上でも役に立つ。 まず、自分にも当てはまる部分があるので、自分のパーソナリティの傾向を 冷静に分析するのに役に立つ。 さらに、「普通の」学生との付き合いにおいても、学生の持っている パーソナリティの傾向を分析するのに役に立つ。この本を読みながら 思ったことは、自尊心とか自我を防衛するというのは、 けっこう微妙なバランスの上に成り立っているものらしいということだ。 まだ青年期であって「大人になって性格が丸く」なっていない人の中には、 防衛の仕方が下手なケースがけっこうある。それが極端な形で出現するのが 「パーソナリティ障害」であろうと思う。そういう意味でも この本はいろいろ考えながら興味深く読めて、2日間で読み終わってしまった。