たとえば、この本にも載っている「象と牛図屏風(白象黒牛図屏風)」の 実物を見た。実際の迫力は、大きな屏風を目の前にしないと分からない。 大きな屏風にはみ出すように描かれた象と牛、それから小さな犬と烏の 対比は、実物で見てこそその大胆さが伝わる。大きさと屏風独特の 立体感は、平らな写真にするとどうも間が抜けてしまう。
その他、実物を見たもので、この本に載っていないものだと、 「軍鶏図」「神仙亀図」という水墨画におけるいかにも手慣れた筆捌きは 彼が素晴らしい達人だったことを認識させるものだった。
この本の主題のもう一人の蕭白は、プライスコレクション展では 2作品しか出ていなかった。この本では、彼の激しくグロテスクな特徴が わかる名品が数々紹介されている。蕭白も蘆雪も、30 代の時に 最も個性的な作品を描いているということをこれを読んで知った。 年を取ると画風も落ち着いてきたようである。
中にあった森村泰昌のエッセイより
曾我蕭白はトゲっぽい。(中略)ちょっとSMショップみたいである。
長澤蘆雪はぬいぐるみ系である。