環境問題はなぜウソがまかり通るのか
武田邦彦著
洋泉社ペーパーバックス 024、洋泉社
刊行:2007/03/12
名大生協で購入
読了日:2007/08/24
いつもホームページの文章を楽しませていただいている
武田先生の
最近の著書である。おもしろかったので2晩で読んでしまった。
内容は、武田先生がいつも主張されていることなので
私にとって目新しいわけでもないけれど、まとまって読むと
それはそれで面白く読める。私はあまり専門ではないので、
真偽が良く分からないところも多いが、私がわりとよく
知っている問題である地球温暖化問題に関する記述からすると、
細かいミスはあるかもしれないが、おおむね正しいことが
書いてあるのだろうと思う。
全体は5章からなる。それぞれ書かれていることは以下の通り。
- ペットボトルのリサイクルは環境に悪いし資源の無駄だから
即刻止めるべきだ。
- ダイオキシンは人体にとってはそれほど強い毒ではない。
- 地球温暖化問題では、専門家が言っていないことが
まことしやかに流布している。
- 紙のリサイクルは、ちり紙交換業者を廃業に追い込むという
弱いものいじめである。このように環境の名の下に
弱者に不当なしわ寄せが行くことが多い。
- 本当の環境問題は、石油資源枯渇問題、食糧の自給の問題、
安全の問題などである。
基本的にはその通りであろうと思う。
ただし、本筋には関係ないけれど、著者の専門外と思われる
細かい点ではいくつか間違いがある。私に分かったところだと
- p.152 で「新生代に入ると同時に氷河時代になった。」と
あるのは全く誤りとまでは言わないが、不適切である。
新生代はずっと寒冷化しているものの、最初はそこそこ
暖かく、北半球に氷床ができるのは 300 万年前になってからで、
いわゆる氷河時代というのは通常は第 4 紀と呼ばれる 200 万年前以降である。
- p.151-152 のあたりでは、古生代後期の氷河時代のために生物の大量絶滅が
起きたようなことが書いてあるが、これは違う。
氷河時代はデボン紀から石炭紀を経て二畳紀(ペルム紀)中頃までであり、
二畳紀(ペルム紀)末の大量絶滅はこれとは区別されるもっと急激な事件である。