神社のルーツ ― 血統から探る「神様ネットワーク」

戸部民夫著
ソフトバンク新書 026、ソフトバンククリエイティブ
刊行:2006/12/26
名古屋本山の「いまじん本山」で購入
読了日:2007/01/06

初詣記念に読んだ。神社の由来は私はいままであまり知らなかったし、 知ろうと思ったことがなかった。ひとつには、私が北海道のような 歴史の浅い土地で育ったせいと、もうひとつは、明治政府の誤った 宗教政策のおかげでそれまでの神社の由緒が破壊されてしまったせいである。 神道というと記紀神話しか出てこないものだと思っていたので、それだと 私にはあまり魅力的には思えない。しかし、東海地方に住むようになって 分かったのは、中部地方以西には由緒正しい神社がけっこうあって、明治以前の 痕跡、すなわち民俗信仰の痕跡を残しているということだ。そういうものは 私としては魅力的に思える。そういった信仰の由緒を系統的にまとめたものが ないかなあと思っていたところに本屋で見かけたので、早速買って読んでみた。 期待通り、主要信仰の由緒を系統ごと(稲荷系、八幡系など)に要領よく まとめてあって、私のニーズに応えてくれる本であった。

この本は結構すっきりはしているのだけれど、多少難を言うなら、 まだ整理が足りない感じがする。もともと神社の起源は複雑で、 矛盾するいろいろな説があったりするようなものだから、 それら全体を書いてしまうと、それらの相互関係や真偽の重み付けが わからなくなる。この本では、そういう部分がまだ残っている。

この本のような整理がされてはっきりわかることのひとつは、関東以北には 全国ネットワークを形成するような信仰の中心となる神社が少ない ということである。ここに書いてあるのだと、わずかに塩竈信仰(鹽竈神社)、 鹿島神宮、香取神宮くらいで、いずれも東国支配の前線という意味がある。

ちなみに、私の今年の初詣は、ご近所の城山八幡宮で地元民の行く「八幡系」の神社、 去年は大宰府天満宮で「天神・天満系」の主要神社のひとつであった。 実のところ、私がこれまで八幡信仰について知っていることと言えば、 源氏の武将が「八幡大菩薩」を拝んでいたらしいという程度だったのが、 実際は紆余曲折の歴史があるらしいということを垣間見ることができた。