こういうものを見ていると、美とは何か、という問題に突き当たる。 これは当然のことながら難しい問題である。醜悪とされているものも、 ある種の人々(私を含んで)から見れば実に面白いものである。 「アート」を文字通り受け取れば「人為」であるから、 人間がつくり出したものすべてが「アート」であると言うことができ、 その背後には何らかの人間の意図や営みが必ずあるはずである。 それが興味をかきたてる。
ここに載っているものは、たとえば、廃墟、工場、ダム、 秘宝館、コンクリート仏といったものである。こんなものは、従来、 「心ある人」ならば世の中から消し去りたいと思ってきたに違いない。 でもそれらには、今ちょっと時代遅れになってみると、何ともいえない 味わいがある。「年月が経てば何でも価値が出る」と建築系の 某先生が言っていたような気がするが、まさにそういうものなのだろうと 実感する。
本号は、東海地方特集。名古屋の俗悪の象徴と言っていた人もいたような 愛知県庁舎や名古屋市庁舎も登場している。 コンクリート像だらけなことで有名な桃太郎神社や五色園ももちろん登場 する(私は行ったことがないので、そのうち行ってみたい)。
この号から季刊雑誌になったようだが、このままでは長続きしないだろう。 ひととおり珍妙スポットが出尽くしたら終わりそうである。それというのも、 内容が、web pages を単に集めただけのレベルに止まっているからだと思う。 つまり、全体的に取材が浅いのだ。大手の旅行雑誌ならば、背景となる ことがら、たとえば珍妙な物体を作った人がどういう人で、いつどういう きっかけで作ったのか、とかいうことを取材するだろう。ところが、 この雑誌にはそれがないのである。要するに、珍しいものをみつけて 写真を撮ったところには価値があるが、それ以上のものではない。 これから長続きするかどうかは、より深い取材ができるかどうかに かかっているように思う。