ワンダーJAPAN4 2007 年夏号

三才ブックス
刊行:2007/07/01
名古屋本山の Village Vanguard 本山で購入
読了日:2007/07/25
いわゆるB級スポットの写真を集めた雑誌である。 従来、下品、俗悪、悪趣味なものとして忌み嫌われてきたものを見に行って その写真を公開するウェブサイトが、近年たくさん出現している。 この雑誌は、それらを集めてきてできたようなものだ。

こういうものを見ていると、美とは何か、という問題に突き当たる。 これは当然のことながら難しい問題である。醜悪とされているものも、 ある種の人々(私を含んで)から見れば実に面白いものである。 「アート」を文字通り受け取れば「人為」であるから、 人間がつくり出したものすべてが「アート」であると言うことができ、 その背後には何らかの人間の意図や営みが必ずあるはずである。 それが興味をかきたてる。

ここに載っているものは、たとえば、廃墟、工場、ダム、 秘宝館、コンクリート仏といったものである。こんなものは、従来、 「心ある人」ならば世の中から消し去りたいと思ってきたに違いない。 でもそれらには、今ちょっと時代遅れになってみると、何ともいえない 味わいがある。「年月が経てば何でも価値が出る」と建築系の 某先生が言っていたような気がするが、まさにそういうものなのだろうと 実感する。

本号は、東海地方特集。名古屋の俗悪の象徴と言っていた人もいたような 愛知県庁舎や名古屋市庁舎も登場している。 コンクリート像だらけなことで有名な桃太郎神社や五色園ももちろん登場 する(私は行ったことがないので、そのうち行ってみたい)。

この号から季刊雑誌になったようだが、このままでは長続きしないだろう。 ひととおり珍妙スポットが出尽くしたら終わりそうである。それというのも、 内容が、web pages を単に集めただけのレベルに止まっているからだと思う。 つまり、全体的に取材が浅いのだ。大手の旅行雑誌ならば、背景となる ことがら、たとえば珍妙な物体を作った人がどういう人で、いつどういう きっかけで作ったのか、とかいうことを取材するだろう。ところが、 この雑誌にはそれがないのである。要するに、珍しいものをみつけて 写真を撮ったところには価値があるが、それ以上のものではない。 これから長続きするかどうかは、より深い取材ができるかどうかに かかっているように思う。