そして誰もいなくなった

Agatha Christie 著、清水俊二訳
原題:Ten Little Niggers(ただし、米版では Ten Little Indians, その後 And Then There Were None, あるいは The Nursery Rhyme Murders の一つ)
HAYAKAWA POCKET MYSTERY BOOKS No.196、早川書房
刊行:1975/11/15
原著刊行:1939
東京八重洲の古書店「八重洲古書館」で購入
読了日:2008/06/09
言わずと知れた推理小説の名作。でも、私は初めて読んだ。 最後で犯人の種明かしをされるのだが、これは全然予想できなかった (あまり手がかりが書かれていないので、当然ではあるが)。 犯人探しというよりは、孤島で全員が死んでしまって誰も残らなくなる という筋書きの見事さを味わうべきものである。もちろん、犯人が 他の全員を殺した後に自殺するという自然な成り行きにしたがっているのだが、 その最後に自殺したのが誰かがよくわからなくなっているのがミソ。

10人のまるで関係のない人が孤島に招待される。 童謡「10人のインディアン」の歌詞に沿って、10人全員が順々に殺される。 それだけだと残酷すぎて単なる恐怖小説になるので、 その10人それぞれが過去に誰かを殺したか死に追いやった経験を持っている (らしい)という設定にしてあり、それに対する懲罰になるという 形を取っている。


後日、 この訳には問題があるという指摘を見つけた。この web ページを読むと、 クリスティがトリックを仕掛けるときに、 言葉遣いに微妙なさじ加減を使っていることがわかって面白い。 それが訳文では分からなくなっているということである。