日本列島は沈没するか?

西村一、藤崎慎吾、松浦晋也著
早川書房
刊行:2006/07/15
名大生協で購入
読了:2008/09/14
映画「日本沈没」を機に、日本を沈没させる話で遊んじゃおうという趣旨の本である。 ただし、本書は、映画を見る前に書かれたものらしく、映画に影響されてはいないとのことである。 書いているのは、いずれもプロの地球科学者ではない。でも、ちゃんと勉強してあって、 地球科学の良い宣伝になっている。 私としては、高校生対象の講演準備のため、日本沈没の遊び方の参考にしようと思った次第。

以下の4つの部分が分担執筆で構成されている。

フィクションとしての沈没・洪水物語/西村一
小説「日本沈没」の紹介と、いろいろな沈没小説、沈没伝説の紹介
小説に使える(かもしれない)地球科学/藤崎慎吾
SF作家による地球科学概論という感じの部分。けっこうよく勉強してある。地球の歴史を 自分の一生と比べてみるというおもしろい趣向の記述がある。
ただし、ちょっと丸山茂徳に毒されすぎの面がある。 たとえば、「地球の核の対流が 27 億年前に開始し、磁場が急増した」というのは、Hale (1987) の説に 丸山氏が尾鰭をつけたものなのだが、Hale (1987) が書いている磁場の急増のデータが怪しい意味があり、 本当はあまり真に受けてはいけない。たぶん地球磁場も核の対流ももっと昔からあったと考える方が良い。 とはいえ、これは専門家でないとなかなかわからないことなので、仕方のないことではある。
検証、日本沈没―フィクションはどこまで正しいか?/西村一
日本列島を沈没させるシナリオをいろいろ検討している。最新の地球科学をよく勉強してあって、 映画「日本沈没」のシナリオよりも深く考えてあって面白い(映画製作の表面に表れないところで、 もっといろいろ考えてあったのかもしれないが、表面的に言えば映画で採用されたシナリオはそれほど深くない)。 著者がいまのところ最もうまくいきそうとしているシナリオは、メガリスの沈降、410km層での マグマの急速移動、古いトランスフォーム断層の沈み込みを組み合わせたものだ。
そして日本人はどこへ/藤崎慎吾・松浦晋也
これは、JAMSTEC周辺の地球科学の最先端の紹介といえるもので、よく書けている。 殊に海底掘削関係の話は、私はあまり詳しくなかったので勉強になった。ただし、 地球シミュレータの説明の中には??というところも少しあった。