嘘つきアーニャの真っ赤な真実

米原万里著
角川文庫 13395、角川書店
刊行:2004/06/25
文庫の元になったもの:2001/06 角川書店刊
東京八重洲の古書店「八重洲古書館」で購入
読了:2008/07/20
大宅壮一ノンフィクション賞を取っていて有名なのでいつか読んでみたいと思っていたところ、 古本屋で見かけたので買って読んでみた。以下の3編からなる。いずれも、著者が 小学生から中学生くらいの時にいた在プラハ・ソビエト学校での女友達のことと、 その後東欧の社会主義体制が崩壊して30年くらいぶりに彼女たちを探して再会したときのことが書かれている。 著者が日本に戻って4年後、プラハの春がワルシャワ機構軍によって潰された。25年後、チェコ共産主義体制が 崩壊した。その激動の時代を生きた実際の人々の生がいきいきと描かれている。 感動的な物語となっていて、数日で読み終えてしまった。
リッツァの夢見た青空
ギリシャ人のリッツァが主人公。リッツァは耳年増で、 数学のできない女の子だった。父親は、プラハの春でワルシャワ機構軍に公然と反対したために プラハにいられなくなり、ドイツに移住した。そして、リッツァは、著者が再会した時には、 数々の苦労を乗り越えて、ドイツで医者として安定した生活を送っていた。
嘘つきアーニャの真っ赤な真実
ユダヤ系ルーマニア人のアーニャが主人公。アーニャは嘘をよくいう女の子だった。 それでも、優しくて友達を大事にするので、みんなから愛されていた。彼女の家庭は、 共産主義政権の特権階級に属していた。チャウシェスク政権崩壊後も立派な家に住んでいた。 そのことが、アーニャの一家に今でも暗い影を落としている。
白い都のヤスミンカ
ボスニア人のヤースナが主人公。ヤースナは絵がうまくて勉強も良くできる少女だった。 再会するときにわかったことは、ヤースナの父親は、ユーゴスラビア連邦の大統領のうち、 ボスニア選出の最後の大統領だった。著者がヤースナに再会したのは、ベオグラードだったが、 そのときボスニアは紛争の最中で、ヤースナは両親と連絡が取れない状況にあった。 再会して3年後、ベオグラードも空爆を受けた。ヤースナがどうなったのかはわからない。