Boston 夫人の思い出は、イギリスの最上の側面である。夫人は気持ちの良い人柄の人で、 彼女のおかげで音楽家との交流なども楽しめたらしい(「冬の楽しみかた」)。うらやましい! 良いイギリスの雰囲気が楽しめるのがこの本の読みどころである。 「四季」におけるイギリスの四季の描写は絶品で、さすがに文学者である。 まさにイギリスの四季はこんな感じである。もっとも、ケンブリッジと 私のいた北イングランドとはちょっと違っていて、私は ここに描写されているような静かな flood は見たことが無かったけれど。 「豚の個人主義」では、イギリスの個人主義が描かれている。 イギリス人があんまり宗教的でないのは、個人主義と齟齬をきたすせいだろうと 推測されている。たしかに、私が見た限りでも周辺にはあんまり熱心な church-goer は いなかったと思う。日本人もあんまり宗教的ではないと思うけれど、 日本には宗教政党があるところを見ると、日本人の方が宗教的なのかな?
一方で、イギリスでの悪い経験も綴られているけれど、著者は基本的にはイギリス好きなので、 悪口にはなっていない。 悪い経験としては、ロンドンに着いたばかりのときのホテルが汚くて蛇口が壊れていたとか、 不良青年グループにおどかされたとか(「ロンドンの哀しさ」)、自動車の車上荒らしに 遭ったとか(「甘いクリスマス、辛いクリスマス」)いったような話が書かれている。 実際、イギリスは、ヨーロッパの中でも車上荒らしとか車両盗難がたしか最も多いらしいし、 麻薬や覚せい剤がけっこう若者に広まっているらしいことも、私はイギリスにいるときに知った。