太陽は23歳!? 皆既日食と太陽の科学

日江井榮二郎著
岩波科学ライブラリー 160、岩波書店
刊行:2009/07/07
名大生協で購入
読了:2009/09/05
日食の話から始まって、太陽の科学を広く浅く書いてある本。 私は、太陽の話は時々聞き齧るので、まるで新鮮な話があるわけではないけれど、 コンパクトに幅広い知見をまとめてあって、読みやすい。

題名の「23歳」の意味は、見ただけでは私には見当が付かなかったが、 太陽が銀河中心の周りを回る2億年という周期が太陽にとっての1年だとすると、 太陽系が出来てから46億年だから、年齢は23歳ということだそうだ。 それとともに、太陽は激しい活動をしている若々しい星だという意味も込めた ということのようだ。


細かい話だが、著者の専門ではない地球の気候の話で間違いを2カ所見つけた。

(1) pp.102-103 で、水蒸気の吸収はほぼ飽和しているので温暖化に効かないかのごとく 書いてあるが、本当は、水蒸気の吸収もかなり効いていて、IPCC の予測には それが込みになっている [詳しくは IPCC 4th assessment report WG1 Chapter8 の 8.6 節に 書いてある。IPCC レポートの政策決定者向け要約には書かれていないので目に付きづらいが。]

(2) p.103 で、氷河期は数億年ごとにやってきて、それがミランコビッチ・サイクルで 説明できるかのごとくに書いてある。これは誤解を与える。数億年ごとにやってくるのは、 「氷河時代」で、それはプレート運動のウィルソンサイクルに伴う火山活動の低下など でもたらされる(原因は本当は複合的なので一言では言えないが)。 一方、氷河時代の中の氷期・間氷期サイクルは、ミランコビッチ・サイクルで 説明されている。これは、4万年とか10万年とかの周期である。