ぼくらの頭脳の鍛え方 必読の教養書400冊

立花隆・佐藤優著
文春新書 719、文藝春秋
刊行:2009/10/20
名大生協で購入
読了:2009/11/04
立花隆、佐藤優という読書家として有名な評論家がそれぞれ単行本100冊と 文庫・新書を100冊ずつ推薦して、それらについて対談をするという本。 おもしろい話題が随所にあるので、実に楽しんで読める。そのため2晩くらいで読破。 第1章と単行本100冊は文藝春秋 2008 年 12 月号の記事の拡大版のようである。

面白かった部分の例として土井たか子を論じている部分を挙げよう。

佐藤:一つめ、彼女は「八月革命説」を取らない。(中略)現行憲法は欽定憲法であり、 現行憲法と第日本帝国憲法は連続しているという認識を彼女はもっているんです。
もう一つ。彼女は九条護憲論は取らない。一条から八条までも含めた、すなわち 象徴天皇制を含めた護憲論の立場です。
(中略)
日本社会党における彼女の歴史的な役割とは、本人が意識していたかどうかは別にして、 結果として、労農派マルクス主義があれだけ強かった党を非マルクス主義的な右翼社会 民主主義政党にしたことなんです。つまり社会党の右旋回です。
佐藤優の外務省評もおもしろい。
佐藤:今の官僚の一番の問題は能力低下の問題です。横着だとか、品性が悪いとかと言って 官僚が批判されることがありますが、横着で品性が悪いのは昔からなんです。今の問題は、 官僚の能力が著しく落ちていること。
外務省のロシア語通訳はかなりひどい。

本の選び方も、それぞれの評者らしい特色のあるもの。政治、歴史、思想・哲学、文学、 第二次世界大戦などの本は両方の評者が選んでいるので、議論も豊富である。 立花隆は、それに加えてサイエンスの本を多く選んでいるのが特徴。 佐藤優は、神学部出身で外務省ではロシアを相手にしていただけあって、宗教やマルクス主義の 本を多く選んでいる。

科学や哲学の本の選び方は、私とは少し好みが違う感じ。科学の本だと、私ならもう少し 地球科学的なものとか科学史的なものを入れるだろうし(仕事柄当然!)、哲学なら 古典より新しめのものにもう少し重点を置くだろう(哲学は時代背景に依存するから、 昔の哲学は今では感覚的に理解できないものが多い)。

困るのは、索引が無いことである。どの本に関する議論をどこでしているのかがわかるような 索引があると、あとで必要なところを読み返すのに便利だっただろうに。