子どもはことばをからだで覚える メロディから意味の世界へ
正高信男著
中公新書 1583、中央公論新社
刊行:2001/04/25
千葉県習志野市の古本屋 BOOK OFF モリシア津田沼店で購入
読了:2010/06/13
本書で著者は、言語の習得における身振りの重要さを強調している。
子どもは言葉を文字通り体得していると言うわけである。
言語の習得に身振りが大切という考え方は、最近流行のミラーニューロンの話とも
関連していそうで興味深い。実際、
今の著者のウェブページにはミラーニューロンへの言及がある。
著者にしてみれば、ミラーニューロンの話は、まさに思っていた通りということだったのではないだろうか。
以下、サマリー
- 第1章 赤ちゃんはなぜ歌が好きか
- 赤ちゃんの音に対する感受性が生得的なものかどうかは、
耳の聞こえない親から生まれた耳の聞こえる新生児に対するテストでわかる。
そのようなテストをした結果、以下の2つのことがわかった。
- 赤ちゃんは不協和音よりも協和音を好む。これは声が倍音構造を持っていることに対する適応的な本能ではないだろうか。
- 赤ちゃんは子供向けの歌い方の歌を好む。すなわち、ゆっくりしたテンポで、高い声で歌われるのを好む。
- 第2章 記憶することのはじまり
- 赤ちゃんは、単語をどのように認識するのだろうか?以下のようなことがわかってきた。
- ある種の音の連なりを一塊ととらえる生得的なゲシュタルト知覚が存在する。
- 生後8ヶ月の赤ちゃんには、歌から単語を切り出す能力が少しある。
- 生後9ヶ月の赤ちゃんには、朗読から単語を切り出して記憶する能力がある。
- 赤ちゃんの記憶能力は、発達するにつれ、メロディーの記憶から語彙の記憶へと移ってゆく。
- 第3章 発声はリズムにのって
- 赤ちゃんが声を上げて笑うことができるようになるのは、生後4ヶ月ころである。
4ー6ヶ月の頃は、笑いと足の動きが同期する。
6ー8ヶ月の頃になると、笑いと手の動きが同期するようになる。
そしてその頃、喃語を話すようになる。
やがて、子音をきちんと出せるようになると、声と手の同期が無くなる。
そういうわけで、笑い、声、身体運動は密接に関係して発達してくるようだ。
- 第4章 「指さし」ができるようになる理由
- 単語とその指示対象を結びつけられるようになるために指さしができるようになることは重要である。
- 指さし行動は、指立て行動から発達するらしい。
- 指さしは、もともと探索行動で、それを親が指示だと誤解することで、指示を表すように
なってゆくようだ。
- 第5章 ことばの意味はどのように把握されるのか
- 単語の意味を把握するのは決して易しくはない。たとえば、ピンクのプラスチック製のコップを指して「コップ」と言ったところで、
その「コップ」という語が、ピンクという色を表すのでもプラスチックという材質を表すのでもなく、ある機能を持った物体を表すことはすぐにはわからないはずである。
実験により、意味の把握には、特定の意味に焦点を当てるジェスチャーが重要であることが分かってきた.
視空間認知に障害のある Williams 症候群の子供は、語彙の把握にも問題が出る。
これは、ジェスチャーを正しく認識できないせいだと解釈できる。
- 第6章 子どもはことばをからだで覚える
- 子どもが「行く」と「来る」を使い分けられるようになるためには身振りが重要である。
子どもを観察すると、「行く」ということばは、身体の中心から外側に手や腕を動かす動作を伴い、
「来る」ということばは、身体の外側から中心に向かって手や腕を動かす動作を伴う。
調べてみると、身体動作が正しくできるようになってから、その後で言葉の使い分けが
できるようになる。