社会不安障害 ―社交恐怖の病理を解く

田島治著
ちくま新書 725、筑摩書房
刊行:2008/06/10
福岡市博多駅の紀伊国屋書店福岡本店で購入
読了:2010/09/19
かつては対人恐怖症と呼ばれ、日本にしかないといわれていたものが、最近は「社会不安障害(SAD)」と名を変えて国際的に認められたものになったそうだ。認められるようになったひとつの理由は、従来、鬱病の治療に用いられてきた SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬 Selective Serotonin Reuptake Inhibitor)と呼ばれる一群の薬がよく効くことが認められるようになってきたことにあるそうだ。つまりは製薬会社のキャンペーンもあるということだ。とはいえ、製薬会社の陰謀というわけでもなく、実際問題として薬が効いて生活が劇的に改善する人もいるから、SAD の人にとっては良い時代になったわけである。

SAD (Social Anxiety Disorder) は、「社会不安障害」と訳されるものの、「社交不安障害」と訳したほうがより適切で、人と会ったり人前で何かをしたりすることに恐怖を覚える障害である。どのような状況でどの程度の恐怖を覚えるかは、人によって様々ということだ。従来は単に性格の問題とされてきたが、子供の頃活発だったのに思春期で変わるということもあることから、やはり病気と見るべきであろうと書いてある。ひどい場合は、電車にも乗れなくなるとのこと。

SAD のメカニズムは、はっきりとはわかっていないらしい。セロトニンとの関連とか扁桃体との関連とかが書かれている。SSRI を飲むと「まあいいか」という気分になるそうで、こだわりが取れることが SAI の治癒と関係ありそうである。

こういう本を読んでみたのは、身の回りにも SAD とは言わないまでも、そういう気質の人がけっこういそうなことに気づいたからである。登校拒否とか引きこもりになってしまう人のうちのある部分はそうなのであろう。そういう人と接するのに直接役立つわけではないけれど、ヒントが得られた感じがした。