研究評価・科学論のための 科学計量学入門

藤垣裕子・平川秀幸・富澤宏之・調麻佐志・林隆之・牧野淳一郎著
丸善
刊行:2004/03/30
九大生協で購入
読了:2011/07/19
科学計量学というものがあると聞き、それが自分の研究の上でも役に立つかもしれないと思って読んでみた。 全体的には分かりやすく書かれていた。 研究評価にはけっこう工夫して使われているのだなという印象を持った一方、科学の動態をつかむための 科学論の研究としてはまだいろいろ発展の可能性があるかもしれないと思った。 さらに、実際の科学研究(文献検索など)や科学史研究などへの応用も可能性がありそうだと思った。

本を読む限り、科学の動態を知るための研究のやり方としては少し不自由だと思う点が2つあった。 一つは、ここで書かれている科学計量学は「科学論文等書かれたものから得られる諸データを 定量化していろいろな関係を見ること」なので、書かれたもの以外から得られる情報が利用されていない。 これは、科学論としては狭い感じがする。他の定量的なデータを含めた様々なデータを総合的に 利用する研究がどの程度行われているのかは、本だけからはよくわからなかった。 研究評価に関しては、14章において科学計量学はデータの一部であって、複数の方法が 組み合わせて用いられることが明記されている。 もう一つは、本でも書かれているけれども、手法として引用分析や共著分析などが主で、 論文の内容があまり使われていない点である。論文の内容を使う手法として書かれているのは、 語の出現頻度の分析や共語分析などである。科学史・科学哲学や実際の科学研究に応用しようとすると、 このあたりでもっといろいろな手法の開発が必要そうである。


内容でよくわからなかったところとミスプリ
p.141 (4) 式の左辺の括弧の中
(誤)G  (正)Gi
p.141 (5) 式の右辺の和記号の下の y に関する説明
(誤)Gi (正)Gj
pp.142-143
(9) から (A-I) X = 0 なので (I-A)-1 は存在しないが、p.143 では (I-A)-1 が存在することを前提にして書かれている。
[後日 (Dec 2011)、ここはミスであることを著者に確認した。]