隠される原子力・核の真実 ー原子力の専門家が原発に反対するわけ

小出裕章 著
創史社(発行)、八月書館(発売)
刊行:2010/12/12、刷:2011/05/25(第8刷)
福岡博多駅の紀伊国屋書店福岡本店で購入
読了:2011/08/24
原発反対派ということで最近よくマスコミにも登場する著者の本を何か読んでみようと思って買った。 福島第一原発事故の前に書かれたものが良いかと思って選んだ。

本書では原発の問題点がいろいろ挙げられている。 なかでも著者が原発に反対する最大の理由は、やはり核廃棄物のようである。 この問題が最も詳しく論じられている(2、4、7、11章)。 福島第一原発事故が起こらなくても、核のゴミをどこにどうやって捨てれば良いのかは難しい。

福島原発事故が起こってしまってみると、低線量下での被曝の危険度をどの程度だととらえるかが、 論者によって言うことが異なるポイントの一つである。 著者は、低線量下では LNT(直線・しきい値無し)仮説よりも危険度が高いという立場を 取っている(1章)。したがって、年間 20 mSv の被曝等もってのほかのはずで、 今の福島原発事故も大変深刻な状態であるととらえているはずである。 実際、 ラジオ番組でもそのように述べている

そのほか原発の賛否を論ずる上でのポイントとしては、将来のエネルギー問題や 地球温暖化問題に対する立場もある。まず、エネルギー問題に関しては、 現状の日本では火力と水力で十分という見方をしている (pp.105-107)。 将来も、少なくとも石炭は大量にあるから(使い切るのには1000年かかる) 化石燃料は無くならないのに対し、ウランはそれほど大量に無い(pp.37-38)。 したがって、当面は化石燃料を使うしか無いという考えである。 これに対して、地球温暖化の主因が二酸化炭素であるという説には疑いを持っている(8章)。 それと同時に、日本を含む先進国はエネルギーを使い過ぎであるという立場を取っている(12章)。 ということで、まとめると、当面は、使うエネルギーを減らして化石燃料でエネルギーを まかなって行きましょうという立場である。私から見ると、この論じ方は少し甘いと思うものの (エネルギーの質の問題を論じていないとか、温暖化懐疑論を過度に信用しているように 見える点とか)、原発に反対するならば、結論としては当然そのような立場になるはずである。

一般向けの本なので、言いたいことはわかりやすい。ただし、 グレイ、シーベルト等の単位の説明があまりなされていない。このような単位は 事故前だとふつうはわからないのではないだろうか(私もちゃんと知らなかった)。

本書で初めて知ったこと: