水戸岡鋭治の「正しい」鉄道デザイン 私はなぜ九州新幹線に金箔を貼ったのか?
水戸岡鋭治・渡邉裕之 著
交通新聞社新書 006、交通新聞社
刊行:2009/08/21
「水戸岡鋭治の大鉄道時代展」@JR九州ホールで購入
読了:2011/09/04
JR九州にはおもしろい列車がけっこうたくさん走っている。そのデザインをほぼ一手に手がけている水戸岡鋭治の著書である。水戸岡鋭治が話したものを、ライターの渡邉裕之がまとめたものらしい。
著者がどのような考えの元にどうやってあのようなとんがった車両を作っていったのかがわかって実に面白い。経営本位から利用者本位への考え方の転換が必要だったとのこと。
従来は、このように一人の人が鉄道のデザインを総合的に手がけるということはなかったらしい。
列車だけでなく、制服などもてがけている。
JR九州の場合は、ひとつにはお金がなかったので、最初は無名だったであろう著者にデザインをまかせる気になったのだろう。
もちろんJR九州の経営者に人を見る目もあったのだろう。
デザインにはコンセプトを明確にしておくことが重要なようである。
ひとつには会社の経営陣を説得しないといけないのと、
もうひとつには働いてくれる職人とコンセプトを共有して職人に力を発揮してもらわないといけないからである。
記憶に残る部分をいくつか挙げておこう。
- 掃除と雑用がデザインの基本。デザインは利用者が気持ちよく過ごすためのものだから、掃除も雑用も同じという考え。
- 集団作業を上手に行うには、管理する立場にある人が上手に手綱をゆるめることが肝要。それぞれの人が情熱を持って仕事に取り組まなければならないからである。
- 著作権は良くない。優れたデザインは、過去の作品の蓄積の上に成り立っているものだから、権利を主張するのは少し傲慢だと考える。
- 事務所の名前の「ドーンデザイン研究所」の由来は「鈍」。著者は「どんくさい」子供だったけれども、ちゃんと生きる場所を見つけることができた。