動物農場

George Orwell著、高畠文夫訳
角川文庫 2937 オ 2-1、角川書店
収録作品:(1) 動物農場 (2) 象を射つ (3) 絞首刑 (4) 貧しいものの最期
原題: (1) Animal Farm (2) Shooting an Elephant (3) A Hanging (4) How the Poor Die
原出版社:(1) Secker and Warburg
原著刊行:(1) 1945/08/17 (2) 1936, 1950 (3) 1931 (4) 1946
刊行:1972/08/30、版:2005/07/05(第50版)
東京上目黒の古本屋 BOOK OFF 中目黒駅前店で購入
読了:2011/05/01
Orwell の代表作の一つである「動物農場」と短編3つを収録してある。 いずれの作品も、明晰な筆致でわかりやすい。 社会の中にある不条理なことがらを実にはっきりと描き出している。 以下のまとめの中では、最後の部分を中心に引用してみた。 いずれも印象的な終わり方だ。
動物農場
動物農場は、よく知られているようにソ連のスターリン体制の風刺である。 ソ連が崩壊した今では、直接的には風刺としての役割を失ったわけだけれども、 人間社会にこのようなことがいつでも起こりうるということは常に頭に置いておく必要がある。 農場の動物が人間の農場主に対して反乱を起こして、農場主を追い出す。 動物の平等な農場が出来るはずだったが、やがて、豚のナポレオンが独裁者となり、変容してゆく。 最後には
屋外(そと)の動物たちは、豚から人間へ、また、人間から豚へ目を移し、もう一度、豚から人間へ目を移した。しかし、もう、どちらがどちらか、さっぱり見分けがつかなくなっていたのだった。
象を射つ
「わたし」は、植民地時代のビルマのイギリス人警察官。暴れていた象を射ちたくもないのに 射つ羽目になるまでを、植民地時代の社会構造を背景に見事に描いている。最後は
わたしは、おろかな奴と見られたくないばかりに象を射殺した、自分のほんとうの気持ちを、 はたしてだれかわかったものがいたかしら、とよくくびをかしげたものだった。
絞首刑
ビルマにおける絞首刑執行の話。「わたし」は、絞首刑の意味にはっと気付く。
ところが、いま、この死刑囚が、水たまりを避けるためにわきへのいたのを見た瞬間、 まさに絶頂の生命を、突然、断ち切ってしまわなければならない不可解さと、 そのいうにいわれぬ邪悪さとに、はっと気がついたのだ。
しかし、最後には
われわれは、原住民もヨーロッパ人もいっしょになって、すっかり打ちとけて酒をのんだ。 百ヤードはなれたところには、処刑された男の死体があったのだ。
貧しいものの最期
パリで貧しい人たちが入る病院に入院したときの経験を基にして書いたもののようである。 病院でのいやな経験から、そもそも19世紀までは病院が苦痛に満ちたものであったことを 文学作品などから思い起こす。最後にはテニスンの詩「幼児病院」を思い出すのだった。
われ知らずあの詩の筋ぜんぶと雰囲気を、それも、行の多くは文句もそっくりそのまま、 思い出したのだった。