本書は、友田先生に縁のある方々が、その思い出を記したものである。当然のことながら、いかに偉い先生であったかということがわかる。
この本を読んで、友田先生には手堅いだけではなくて洒脱な面があることを初めて知った。何より、絵を描くのがお好きでたくさんのスケッチや油絵も描いておられたようで、その一端が紹介されている。友田先生の父親が漢文の先生だったので、漢籍にもお詳しかったようだ。この書名もそれにちなんでいて、論語の「誨人不倦(人を教えて倦まず)」をもじったものらしい。
研究面では、やはり弦重力計の開発に関わることが多く書かれている。それとともに、ご家族の書かれた文から友田先生が工作好きで、日曜大工やらプラモデル作りに精を出していたことがわかる。なるほどそのくらいの工作好きだったからこそ、あのような重力計ができたのだということが納得できた。お家では、何とテレビも自作されていたようである。常人の及ぶところではない。友田先生は、熱流量計も作られたのだが(私はこれまで知らなかったが)、友田先生にあっては「重力計に比べると私にとっては簡単なものでした (p.323)」だそうな。しかし、そのおかげで上田誠也先生のグループなどがプレートテクトニクスの成立に関連して大きな成果を挙げられたのである。
こういう本だと、友田先生の良い面ばかりが書かれるので、本当の人となりがわからない意味もあるのだが、ところどころに「悪い」面が顔をのぞかせるところがある。東海大学での雑談が採録されているところがあって、そこで「Geologist なんて尊敬しないよね。何をやったって地球の昔をほっぽりだせばわかるんだから。」とおっしゃっている部分がある。この真意はよくわからないところもあるが、編集された高校の教科書の構成が伝統的な分野分けに基づくものになる理由がわかる気がする。