原発と日本の未来 原子力は温暖化対策の切り札か

吉岡斉著
岩波ブックレット 802、岩波書店
刊行:2011/02/08
九大生協で購入
読了:2011/05/05
今回の福島原発事故を予想したかのように(というほど内容はぴったりでもないのだが)、 今年2月に刊行された原発の本。 本書の主たる内容は、日本でも世界でも原子力政策はあまりうまくいっていないということの 紹介である。

著者は、「脱原発派」(反原発というほど過激ではなく、新設はせずに 徐々にやめていきましょうという立場)である。 その論拠は要するに、原発はペイしませんよ、ということだ。 原発は、今は国の政策で手厚く守られているので電力会社が推進しているけれども、 国の保護をやめれば電力会社は撤退してしまうだろうという話である。 確かに、今の福島原発事故を見るとそうだろうなと思う。事故が起こったら 国の保護が無ければ即倒産、という状況では、普通に考えれば怖くて推進などできない。 ではなぜ国が原発政策を推進するのかと言えば、本書によれば、 核武装のための技術的・産業的な潜在力を保持するため (p.43) だそうだ。 一方で、エネルギー安全保障という意味はそれほどない (p.62) というのが著者の考えである。 もしそういうことならば、確かにあまり原発の必要性はなさそうである。 ただし、本書はブックレットであるだけに、こういった安全保障の問題に関する詳しい議論は無い。