驚いたことには、テキストには、著者(諸富氏)が若いころ、三日三晩飲まず食わず寝ずで人生の本当の意味と目的を求めようと考えた経験が語られている。 そのような経験をして初めて、フランクルの考えが初めてよく分かったのだそうだ。つまり、これはある種の悟りのようなものだということだろう。
ところで、amazon を検索して驚いたのは、この著者(諸富氏)は実にたくさん本を書いている。いったいどうやって書いているのだろうか?
収容所で気付いたこととして以下のようなことが書かれている。
以下、「夜と霧」からの引用。
ここで必要なのは生命の意味についての問いの観点変更なのである。すなわち人生から何をわれわれはまだ期待できるかが問題なのではなくて、 むしろ人生が何をわれわれから期待しているかが問題なのである。そのことをわれわれは学ばねばならず、また絶望している人間に教えなければならないのである。 哲学的に誇張して言えば、ここではコペルニクス的転回が問題なのであると云えよう。すなわちわれわれが人生の意味を問うのではなくて、われわれ自身が 問われた者として体験されるのである。
各個人がもっている、他人によってとりかえられ得ないという性質、かけがえないということは、――意識されれば――人間が彼の生活や 生き続けることにおいて担っている責任の大きさを明らかにするものなのである。待っている仕事、あるいは待っている愛する人間、 に対してもっている責任を意識した人間は、彼の生命を放棄することが決してできないのである。
強制収容所の人間からは一切が奪われていたが、与えられた状況の下で取りうる態度という最後の自由は奪われえなかった。
フランクルのインタビューにおける言葉:
私は、他の人々が人生の意味を見出すのを助けることに、自分の人生の意味を見出してきました。
フランクルは、生きる意味を見出すことが大切だと考えていた。収容所で、フランクルは死にたいと告げにきた2人の人に対してある言葉をかけた。
それでも、「人生」はあなた方からあるものを期待しています。あなたたちを「待っている」何かがあるはずです。 それが何かを考えてください。一人の人は「愛してやまない子供が外国で待っている」と答えた。もう一人の人は「科学の研究書をまだ書き終えていない」と答えた。 このようにして2人は自殺を思いとどまった。
フランクルは、人間は人生から問われている存在だ、とした。ふつう、人は人生を問う。そうではなくて、人生が人間を問うているのだ。 人生に何かを求めていると、欲求不満が常に生じる。誰かのために、世界のためにできることは何か、と問うべきだ。 あなたの内側を見つめるのは止めよう。どんな人生にも「使命」がある。欲望中心の生き方では、欲望は満たされない。 フランクルは死刑囚に対しても、今からでも人生に意味を見つけることはできる、と言った。
諸富「すぐに変わることが無くても、いつかフランクルの言葉が生きてくるときがあるはずだ。フッと答えが湧きあがってくることがあるだろう。」
ゲスト:姜尚中(かんさんじゅん)
姜「悩むことは、ネガティブなことではない。」
苦しみや死に意味があるのか?フランクルは、苦しみや死に向き合うことが意味があると考えた。
苦悩とそして死があってこそ人間という存在ははじめて完全なものになるのだ。
姜「苦悩は人間の本性だ。苦悩は、人間性の最高の価値だ。」
諸富「苦悩のための苦悩は意味がない。何かのため、誰かのために悩むことが大事。」
姜「真面目に答えること。他者との対応の中ではじめて苦悩に対する回答もでてくる。」
諸富「自分探しは、本来の苦悩とは違う。」
姜「他の人と苦しみの量を比べたりすると、ルサンチマンになる。
なぜ私だけが苦しいのか?などと考えずに、苦悩の中に人間の尊厳があると考えて、真面目に苦しむこと。」
苦しみの中身は人によって違う。ここに意味があるのだとフランクルは考える。
誰もその人の身代わりになって苦しみをとことん苦しむことはできない。 この運命を引き当てたその人自身がこの苦しみを引き受けることに、ふたつとないなにかをなしとげるたった一度の可能性はあるのだ。運命は天の賜物だとフランクルは考えていた。
姜「運命は神様から贈られたもの。運命はその人だけにしか与えられていない。」
諸富「現代人は、失敗か成功かだけの軸で考える。これでは厚みが足りない。意味と絶望という軸で厚みを取り戻すことが重要。」
姜「意味を問うことが市場経済では失われる。」
現代には豊かさゆえの苦悩もある。フランクルの講演より:
意味の喪失感は今日増えてきている。とりわけ若者の間に。しばしば空虚感を伴っている。 昔のように伝統的価値は何をすべきかを教えてくれない。今や人々は基本的に何をしたいのかわからなくなってきている。
姜「われわれは自由になった。どう行動するかは自分で決められる。しかし、自分を見つめるほど矛盾の中に入り込む。」
諸富「フランクルは、今の時代にはストレス、プレッシャー、緊張感が足りないと言っている。すると、ちょっとしたストレスで折れてしまう。」
姜「今の我々は、欲望を極大化させている。見たいものだけを見るということが閉塞感を作り出している。」
フランクルは、人生を砂時計にたとえた。未来は現在を通過して過去になる。苦悩から逃げないで生きたとき、過去は財産になる。 体験したすべてのこと、愛したすべてのこと、成し遂げたすべてのこと、味わったすべての苦しみ、これらは忘れ去ることができない。 過去は、すべてのことを永遠にしまってくれる金庫のようなもの。
諸富「フランクルは、生き抜かれた時間は永遠に刻み込まれる、と言っている。」
諸富「フランクルが言っている大事な言葉を復習しよう。
(1) 人間は人生から問いかけられている。(2) どんなに人生に絶望しようとも人生があなたに絶望することは決してない。」
姜「ユダヤ人が、それでも人生にイエスと言う、と考えたことに意味がある。」
強制収容所で歌われた歌の歌詞の一節:
それでも人生にイエスと言う
trotzdem ja zum Leben sagen