ドゥルーズ 解けない問いを生きる

檜垣立哉 著
シリーズ:哲学のエッセンス、NHK出版
刊行:2002/10/25、刷:2009/07/30(第 6 刷)
福岡天神のジュンク堂書店福岡店で購入
読了:2013/09/24
フランス現代思想は、何を言っているのかよくわからないのではあるが、 たまにはどういうものか見てみたいという気持ちになる。 というわけで、入門書らしきものを読んでみた。 読んでみると、雰囲気は一応はわかる。 現代になって、いろいろなものが科学のことばで語られるし、 哲学も確定的なことは何も言えないことがわかってくるしで、 これ以上新しいことを哲学で言おうとすると、うまく隙間を突いていかないといけない。 そこを語ろうとするので、レトリカルに難しいことになっている、ということのようだ。 でも、このレトリックに騙されなければそれほど難しいことでもないんじゃないかという 気がしたので、以下で説明する。

というわけで、雰囲気のわかるまとめ的な文を2つ引用してみて、 どういうことが語られているのか考えてみよう。 まず、「II 世界とは解けない問いである 2 世界とは何か [2] 出来事のロジック」の最後の段落である。

進化は、おもいもよらない異質な器官を利用したり、ハイブリッドな接合をなしたりして、 分散するさまざまな眼を、それぞれが特異な出来事として生みだしていく。 そしてわたしたちが、この世界に投げ込まれ、見えない全体を見渡しつつ、 たくさんの折り合わない事柄を同時に抱えながら、それでも前に進んでいくとき、 それは進化のあり方と同様に、ひとつひとつが特異な出来事である。 それは、主体的な決断からはほど遠く、不条理としかいえないパラドックスのなかを かき分けながら、いずれかの解決へと暫定的にたどり着いていく、 そうした生の運動のことである。
私なりに無味乾燥にパラフレーズすると以下のようになる。
進化は、少しずつ起こるしかないので、ありあわせの材料から新しい器官を作る。 同じ機能の器官が、異なる由来の器官から収斂進化することがある(相似)。 私たちが世の中で生活するときも、世の中全体が見えているわけでもないし、 周囲の社会にはいろいろ不条理なこともあるから、行きあたりばったりに、 当座の解決をしないとけいないこともある。最善の解決とは言えないけど、しょうがない。 生きるというのはそういうことである。
こういうふうにパラフレーズするとわかりやすい。神秘的なところが無くなるけど。 なぜこういう具合に言わないのかが不思議ではある。

次に、「II 世界とは解けない問いである 2 世界とは何か [3] 個体化と分化のプロセス」 の最後から2つ目の段落を見てゆく。

特異な個体が、未決定的なシステムを支えていく。そうしたシステム論が描かれなくてはならない。 多様に分散し、それぞれが異なった個体によって、世界がつくりあげられていることを肯定する 存在論が構想されなければならない。
やはりパラフレーズしてみよう。
個体はそれぞれ違うということもシステム論に組み入れよう。 システムの規則が予め決められていなくて、動作しながら決まってゆくということも システム論に組み入れてゆこう。 そのようにして、多様な存在や現象があるということを 真正面からとらえるということになるだろう。
これも以上のように言い換えるとわかりやすい。私はこんな感じでパラフレーズしてわかった気になっている。見かけほど分かりにくいということはなさそうだ。