複素関数論(原書第8版) [技術者のための高等数学4]

Erwin Kreyszig 著、丹羽慶四郎 訳、近藤次郎・堀素夫 監訳
培風館
刊行:2003/03/12(第8版)、刷:2010/09/15(第10刷)
原題:Advanced Engineering Mathematics
原出版社:John Wiley & Sons
原著刊行:1999
九大生協で購入
読了:2013/01/19
授業の参考のために読んだ。数学的厳密さを余り犠牲にせず、しかもわかりやすい。 主に通勤途中に読んで、約1週間で読み終えることが出来た。もちろん練習問題はやっていないが。 最近自分ではあまり複素解析を使っていないので、あやふやなところもあったので、 良い復習になった。 「技術者のための」と書いてあるだけに、応用的なことも書いており、ここでは 2次元のポテンシャル論に1章が費やされているのが特徴。

実数積分への応用が3つにパターン分けされているのは便利である。 それは、3角関数の有理関数の 0 から 2π までの積分、 分母が分子よりも2次以上高い有理関数の−∞から+∞までの積分、 およびフーリエ変換型の積分である。 ただし、このフーリエ変換型の積分でも、分母が分子よりも2次以上高い有理関数の フーリエ変換を考えているが、本当は1次以上ということで構わない。そのことに 触れられていないのは残念である。微妙な話が出てくるので避けたのであろう。

翻訳ミスと思われる箇所が散見されるのが残念である。以下にメモする。


翻訳ミスと思われる箇所でメモしたもの。 原書と比べながら読んだわけではないが、要するに論理的におかしいところとか、記号のミスである。 電車の中で読んだので、気付いたけれどメモしていない箇所もある。 以下の記述は、ネット上にあった原書第9版を参考にした。8版にあって9版に無いところもあるが、 それは論理的に合うように直した。
p.39 (16) 式の2行上
(誤)u = Re(sinz) = sin z cosh y
(正)u = Re(sinz) = sin x cosh y
p.40 (17) 式
(誤)u2 / cosh2 x + v2 / sinh2 x =
(正)u2 / cosh2 y + v2 / sinh2 y =
p.40 図1.30 のすぐ上の文
(誤)なお,z=±1 で写像は等角ではない.
(正)なお,z=±π/2(w=±1)で写像は等角ではない.
p.85 最後の段落の始めの方
(誤)2.3 節のコーシーの積分公式(1*)を用いたが,f(z0)が 2.3 節の(1*)で表示することができるという事実を知っていれば、 議論を進ませて,f(z) の導関数 f'(z0) の存在を立証できるであろう.
(正)ここでは 2.3 節のコーシーの積分公式(1*)を用いた. ここでの議論において f(z) の導関数 f'(z0) の存在を立証するのに必要だった f(z0) に関する事実は,それが 2.3 節の(1*)で表されるということだけだったことに注意しよう.
p.87 定理3の証明の最後の方
(誤)定理1によって,F(z) は解析的である.
(正)定理1によって,F(z) の導関数は解析的である.
p.126 例5の証明の始めの方
(誤)微積分でおなじみのライプニッツの判定法(付録3のA3.2参照)により, 剰余 Rn の絶対値は,第1項の絶対値をこえることはない. なぜならば,剰余 Rn はその絶対値が極限値0の単調減少数列をつくるが, その Rn を項とする級数があるからである.
(正)微積分でおなじみのライプニッツの判定法(付録3のA3.2参照)により, 剰余 Rn の絶対値は,その剰余の最初の項の絶対値をこえることはない. なぜならば,これは交代級数で,各項の絶対値は極限が 0 の単調減少数列をなすからである.