13歳の娘に語るガロアの数学
金重明 著
岩波書店
刊行:2011/07/28、刷:2011/07/28(第1刷)
九大中央図書館で借りた
読了:2014/07/26
最近ガロア理論の解説書がそこそこたくさん出ている。これは、図書館で見た中で、一番すぐに読めそうだったので、借りてみた。
実際、数学書にしては珍しく一気に読めた。それは、著者が数学者ではなく、中学生にでも分かるようにということで書いているためである。
数学者のエピソードだとか、脱線話もなかなか良くて、楽しんで読める。
しかし、細かい証明は抜きにしてあるので、逆に言えば、一気に読むしかない本でもある。
わからないところにこだわっても、この本にはその答えが書いてないからである。
私はガロア理論は勉強したことが無かったのだが、この本でだいぶん雰囲気が分かって良かった。
しかし、いくつか疑問点がでてきた。が、答えはちゃんと書いていないので、分からずじまいである。
いずれ、ちゃんと理解しようと思ったら、もうちょっと本格的なものを読まねばなるまい。
この本は、実際に著者は御嬢さんに教えながら書いたもののようである。御嬢さんのことばもたくさん出てくる。
p.191 によれば、御嬢さんは、著者に「絶対「索引」つけるべきだ!って進言しちゃった」そうで、
良いアドバイスである。私も索引が無いと困る。
以下に、私なりのサマリーを付けておく。
- この本では、有理数係数の代数方程式のみを考える。共通分母をかければ、整数係数の代数方程式だけを考えればよい。
- 方程式の解は、係数の加減乗除だけで書ける(有理数体の元である)かといえば、そうではない。
2次方程式や3次方程式の一般解を思い浮かべるとわかるように、冪根が出てくる。
- 係数の加減乗除で作られる体を係数体と呼ぶ。整数係数の代数方程式では、係数体は有理数体と同じである。
- 係数体にある一つの数 V を付け加えて、それらの加減乗除から作られる体の中に解が含まれるようにすることができることが知られている
(ラグランジュの単拡大定理)。V は、解の1次結合に取ることができる。
このようにして係数体を拡大したものをガロア拡大体と呼ぶ。拡大の元になる体(今の場合は係数体)を、基礎体とも呼ぶ。
- 根の置換がなす群をガロア群と呼ぶ。
- 基礎体 Q の元にガロア群の置換を施しても何も変わらない。
ガロア拡大体 L の元にガロア群の置換を施すと元が移り変わる(体全体としては変わらない)。
元を変えないのは、恒等置換だけである。
- ガロア群の部分群の置換を施して元が変わらないものだけを集めて、Q と L の中間の体 K を作ることができる。
- ガロア群 G を正規部分群 H によって分解する。G = H + αH + …。
コセット(剰余類) H、αH、…のなす群を剰余群と呼ぶ。
- ガロア群に対応する方程式があるように、正規部分群に対応する方程式と剰余群に対応する方程式がある。
正規部分群に対応す方程式の係数は K の中にある。剰余群に対応する方程式の解は、V に正規部分群の置換を施して移り変わるものの対称式になっている。
- 剰余群の位数が素数 n であれば、対応する方程式は Xn = A の形をしており、冪根で解ける。
- ガロア群を、順に剰余群に分解してゆく。このときでてくるすべての剰余群の位数が素数ならば、方程式は加減乗除と冪根で解ける。
このようなガロア群を可解群と呼ぶ。
- 4 次以下の対称群は可解群である。方程式は解ける。
- 5 次対称群の正規部分群は交代群で、その正規部分群は単位元が作る群だけである。剰余類の位数は 60 になり、可解群ではなく、
方程式は解けない。