宇宙最大の爆発天体ガンマ線バースト どこから来るのか、なぜ起こるのか
村上敏夫 著
ブルーバックス B-1857、講談社
刊行:2014/03/20、刷:2014/03/20(第1刷)
九大生協で購入
読了:2014/08/13
ガンマ線バーストなるものが天文学業界ではけっこうトレンディらしいということは知っていたが、
どういうものか全く知らなかったので、読んでみた。
この本では、ガンマ線バーストの発見から歴史を追って平明にその正体がだいたい解明されるまでの解説がしてあって、
たいへんわかりやすく勉強になった。
ガンマ線バーストには天文学の重要な課題、たとえば、ファーストスター、元素合成、高エネルギー宇宙線、重力波
などが関係しているということが分かり、これが大事な研究対象だということを認識した。
ガンマ線バーストの正体が分かるまでには紆余曲折があったことが書かれているが、ともかく結論は、
ガンマ線バーストは、ブラックホールの生成を告げる現象だ
ということである。ほとんど光速のジェットが出ており、そのために相対論がまともに効いてくる現象だそうだ。
ガンマ線バーストは、多くはかなり遠くで光る非常に明るい天体現象だとのこと。稀な現象なのだが、
きわめて明るいので遠くからでも見えるために、けっこう頻繁に検出されるもののようである。
わりと最近の Science (2014 年 1 月 3 日号) で、GRB130427A という比較的近く(38 億光年)で見つかった
ガンマ線バーストの特集がでていた。38 億光年でも近い方なのだから、多くのものは遠くで起こっている。
逆に非常に遠い天体も知られており、GRB090429B は、z=9.4 で 132 億光年のものである。
ガンマ線バーストにもいろいろ種類があるということで、ここで紹介されているのは以下のようなものである。
- 長いガンマ線バースト:極超新星(ハイパーノバ)の爆発。重い星が重力崩壊してブラックホールが作られるときに出てくる。
- 短いガンマ線バースト:中性子星が合体してブラックホールが作られるときに出てくる。r プロセスによる元素合成が起こる。
- 軟ガンマ線リピーター:強い磁場を持った中性子星(マグネター)からでるバーストで、繰り返し起こる。
巨大な太陽フレアのようなもの。今では、ガンマ線バーストの仲間には入れない。
- X線フラッシュ (XRF):ガンマ線が少なくX線が多いバースト。ガンマ線バーストを斜めから観測したものという説、
強めの超新星爆発という説、強い非対称性のある超新星爆発という説などがある。
[Cf. X線バーストは、中性子星表面での核爆発であり、別のもの]
ミスプリひとつ発見
p.217 l.1 (誤)γプロセス (正)rプロセス