宇宙は何でできているのか 素粒子物理学で解く宇宙の謎

村山斉 著
幻冬舎新書 187, む-2 1、幻冬舎
刊行:2010/09/30、刷:2010/12/25(第10刷)
福岡蓆田(むしろだ)の SORABooks 福岡空港店で購入
読了:2014/08/30
この本は発刊の時から話題になり、2011 年の新書大賞も取っている。 それで、2011 年に読んだのだが、その時は読書ノートを書きそこなったので、改めて読み直して読書ノートを書くことにした。 ベストセラーになっただけあって、たいへんわかりやすくて良い本である。 難しい内容が、すぐに読めてしまうようにわかりやすく書かれている。

これは、一般向けの講義をテープ起こしして作られたもののようだ。 新書大賞の web pageにある 受賞記念講演の録音でその辺の事情も語られている。 この講演を聞くと、著者は講演も大変上手で、弁舌さわやかであることがわかる。だからこそ、こんな本の作り方がができたのだということが分かる。 私は、いろいろつっかえながら喋る方なので、こういう本の作り方はなかなかできないだろう。

この新書大賞受賞記念講演によると、科学者の人間ドラマとしての科学という面を描きたかったとのことだ。 これはとくに第4章でいきいきと描かれている。 それと、科学者が今知りたいと思っていることを伝えたかったとのことだ。 これは第5章に書かれている。

ちょっとユーモアを交えて物理学の感覚を伝えてくれているのがうれしい。 たとえば、ファインマン・ダイアグラムの説明は

ご覧になればわかるとおり、この図では反粒子が時間を逆行することになっています。 これはファインマン・ルールの1つなのですが、あまり真面目に考えると頭が混乱して気持ち悪くなるので(笑)、「そういうものか」とファジーに受け止めたほうがいいでしょう。私もあまり真面目に考えないことにしています。(p.140)
となっている。ファインマン・ダイアグラムは、単なる計算上の便宜と考えるべきなのか、実体として解釈すべきなのか、私は素人でよくわからないのだが、玄人でも難しいもののようである。あるいは、バリオン数の説明として
ところが陽子は、陽電子に壊れません。そこでシュトゥッケルベルクという物理学者が考え出したのが、「バリオン数」という保存量でした。何の証拠もないのですが、とにかくそれを保存しなければいけない、保存できれば壊れてもいいんだと考えようじゃないか、という話です。

で、陽子のバリオン数は「1」、電子や陽電子は「0」とされました。だとすれば、陽子はバリオン数の保存則を破らないかぎり、陽電子に壊れることができません。

なんとも強引な発想です。まさに「ためにする議論」としか思えないですよね?

でも、いまのところ、この説明が正しいことになっています。陽子が壊れないという事実を説明する理屈は、ほかにないのです。(p.154)

のよに「強引な発想」としてあるのも気持ちが良い。

以下、簡単なサマリー

第1章 宇宙は何でできているのか
宇宙のエネルギー(質量)の 0.5% くらいが星と銀河で、それと同じくらいニュートリノがある。 それ以外の普通の物質が 4.4% で、暗黒物質が 23%、暗黒エネルギーが 73% である。
第2章 究極の素粒子を探せ!
標準模型では、素粒子は fermion と boson の2種類に分けられる。 fermion は、第1世代、第2世代、第3世代のクオークとレプトンがそれぞれ 2 種類ずつあって、計 12 種類ある。 boson としては、γ(フォトン)、g(グルーオン)、Zボソン、Wボソンの 4 つがある。
第3章 「4つの力」の謎を解く
量子電気力学の考え方では、電磁気力は粒子の電荷が光子を交換することによってはたらくと考える。
第4章 湯川理論から小林・益川理論へ
バリオンにはバリオン数という保存量があって、そのためにたとえば陽子が陽電子に崩壊したりしないのだと考えられている。
クォークは、強い力では変化しないが、弱い力では変化する。
量子色力学では、クォークには、赤、緑、青の3つの色(色荷 color charge)がついていて、常に色が白になるようにふるまう、と考える。
量子色力学では、強い力は、クォークの色荷がグルーオンをやりとりすることではたらく、と考える。グルーオンにも色荷があるので、グルーオンどうしにも強い力が働く。 このために、クォークの間に働く力は距離が離れるほど強くなる。そこで、クォークはハドロンの外には取り出せない。
弱い力は、ウィークボソンが伝える。ウィークボソンには、電荷をもたない Z と 電荷のある W があり、W にはプラスの電荷をもつものとマイナスの電荷をもつものがある。
ベータ崩壊では、d クォークがマイナスの W ボソンを放出して u クォークになることで起こる。 そのことで、中性子 udd が陽子 uud になる。W ボソンは、電子と反ニュートリノに崩壊する。
弱い力ではパリティが保存せず、弱い力は「左」にしか反応しないことが発見された。 しかし、荷電共役変換と組み合わせた CP 対称性はあるというアイディアが出された。ところが、その CP 対称性が破れていることもわかった。 これを説明するのが、小林・益川理論で、クォークが3世代以上あるはずだと予言した。これは、その後証明され、小林・益川のノーベル賞受賞につながった。
ヒグス粒子が発見されれば、標準理論が完成したことになる。 [注:ヒグス粒子は 2012-2013 年に発見され、2013 年にヒグスはノーベル賞を受賞した]
第5章 暗黒物質、消えた反物質、暗黒エネルギーの謎
まだ解明されていない大きな謎の紹介。
暗黒物質の正体は何か?
宇宙の初めの段階で、物質の方が反物質よりも多かったのはなぜか? これに関連して、ニュートリノが反ニュートリノに変わることはあるか? もしあれば、宇宙の初めにニュートリノが反物質を少しだけ物質に変えたと考えればよい。
暗黒エネルギーとはいかなるものか?