筋場理論 囲碁 400 年の歴史を変える究極の打ち方
依田紀基 著
講談社
刊行:2014/11/20(第1版第1刷)
福岡天神のジュンク堂福岡店で購入
読了:2014/12/13
囲碁の依田九段が数年前から「筋場理論」というのを提案しているということは知っていた。それをまとめたものが出たというので読んでみた。
筋場理論は、要するに、接近戦での「良い形」のパターンをわりと簡潔にまとめたものである。「筋場」は効率が悪い点のことで、
そこに自分は打たないようにして、相手に打たせるようにすることが大事だということである。
たしかに簡潔でなるほどと思うことも多い。たとえば、
- トビツケにワリコミは筋が良い (pp.143-166)
- ケイマのハネ出しは筋が悪い (pp.140-142)
- 既存の自分の石が筋場に来ないように工夫する (pp.130-138)
- 見えない筋場に打たせてから利き筋を使う (pp.199-210)
など、私が今までわかっていなかったことがいろいろあった。
けれども、やっぱりわかりにくい部分も多い。それは
- 「筋場」という名前がちょっと感じが悪い。「筋場」というと、語感からすると筋が良い場所のような気がするが、
実は形の*悪い*点のことである。形が*良い*点は「筋の急所」としている。
- 形が複雑になってくると、黒が白の筋場にあり、白が黒の筋場にあるという状況も生じる。その結果総合的に見てどうなのか、
を判定する基準がない。
- 上の事とも関係して、筋場理論の例外がいろいろ書かれているが、その定量的な基準がわからない。つまり、筋場に石が行くのは悪いのだが、
どの程度悪いのかがはっきりしないので、他の点の得失のと関連で総合的に善悪を判断するのが難しい。
- 効率が悪い形を整理しきれていない意味がある。たとえば、「筋場」ではないけれども、図57や61のように石が3つ単にまっすぐ並んだ形は
効率が悪いとしている。効率が悪いのはもちろんわかるのだが(初心者でなければ誰でもわかる)、では「筋場」と比べてどうなのかは書かれていない。
といったことである。要するに、形の良し悪しは局所的に一応はわかるのだが、どのくらい良いのか悪いのかがわからないので総合的な判断ができないということである。
筋場は石の効率が悪いということで、効率が悪いということは1/2手パス相当くらいかなとも思うのだが、どうなのだろうか。