カイシャ化する大学 学長はセールスマン、授業は外注、最高学府はどこへ行く

朝日新聞(朝倉拓也、伊東和貴、河原田慎一、高浜行人、千葉卓朗、山下知子、山本奈朱香、渡辺洋介)著
朝日新聞 select、朝日新聞社 [電子書籍]
刊行:2014/07/11 (WEB 新書版)、2014/08/31 (EPUB 版)
初出:朝日新聞 2014/06/29-07/01
電子書籍書店 Sony Reader Store で購入
読了:2015/03/04
朝日新聞の特集記事をまとめたもの。スマホを使うようになってみると、スマホのサイズにはこういうちょっとした本が具合が良いことがわかった。 通勤途中にちょっと開いて読める。

本の中身は、昨今政財界からの圧力が強まっている大学の情勢である。新聞記者がそれに対してどう考えているかははっきりしない。

第1章 学長、まるで社長 海外回り拠点設置
名古屋大学によるアジアの拠点づくり
学長のリーダーシップ強化をめぐって
第2章 権限集約、攻める学長
弘前大学では、学長が学部長を指名できるようになった
横浜市立大学、平安女学院大学における学長の権限強化
英国や米国における幹部教職員研修
第3章 「餅は餅屋」授業を外注
ベネッセでは社会人スキル教育の委託を関東学院大学から受けている
ベルリッツでは外国語教育の委託を近畿大学から受けている
第4章 コンサル、改善策を伝授
アクセンチュアは、大学経営のコンサルティングをしている
韓国の大学でもコンサルティングが行われているが、委託費を払い過ぎているという話もある
第5章 職員、教授に教え方指南
追手門学院大学には、教授法を教員にアドバイスする職員がいる
大学改革と称するものはろくでもないことが多い。第1章、第2章、第4章がそれにあたる。こんなことが良い結果になるとは思えない。 しかし、第5章にあるような教授法を教員にアドバイスする職員がいるというのは良いことのように思える。 それから、第3章の授業外注の話は、特別な一部の授業に関してはあってよいと思う。 外注ではなくて、外部から非常勤講師を招くことは前からあることではある。 大学経営の観点から見ると、外注すると、その授業の担当者は教育だけすればよく研究や大学運営には関わらないということになるから、 一つの授業あたりの人件費が安上がりになるということである。 外注だけで構成される学校というものを想像してみると、それはいろいろな意味で大学とは言えないものになる。 だから、外注はごく一部の授業に対してしか成立しないことは明白である。