将棋電王戦の軌跡 ~コンピューターが新たな定跡を生み出す日~

週刊アスキー編集部(編)
週刊アスキー・ワンテーマ、KADOKAWA(アスキー・メディアワークス)[電子書籍]
刊行:2014/06/30
初出:『週アスPLUS』の将棋電王戦レポート、「週刊アスキー」880号『人に勝つプログラムの秘密』
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読了:2015/03/10
第1回から第3回の将棋電王戦のレポートをまとめたもの。 将棋では、コンピュータの方がプロ棋士を追い越してしまったことをはっきりさせたイベントである。 無論まだコンピュータにも弱点はあるようだが、プロ棋士側が2勝8敗1分という結果は、 もはやコンピュータの方が平均的プロ棋士よりも強くなったことを示している。

電王戦には最初から注目していたので、本書でとくにこれといって新しいことはなかった。 プログラミングや将棋に関する専門的な話はほとんどなくて、関係者の感想集のようなものである。

コンピュータの弱点ということで興味深いのは、コンピュータに勝った豊島将之七段のコメントである。 豊島七段によると、コンピュータは中盤が強い。 そこで、激しい序盤から中盤無しに一気に終盤になだれ込むような将棋だと人間側が勝てる可能性が高いと考えて、実際にそのように誘導して勝ったということである。 一見、コンピュータは終盤が強いと思われがちだが、一直線の長手数の詰みのようなものだと、読みの打ち切りの設定の具合で、 人間の方が勝つ場合もあるようである。それから、序盤は、昔から言われている通り、コンピュータはそれほど得意ではない(とはいえ、今やかなり強いらしいが)。 それで、序盤から中盤抜きで終盤に行ければ、コンピュータに勝つこともあるのだそうな。