一昔前には「アスペルガー症候群」と呼ばれていたものも、最近では「自閉症スペクトラム障害」と呼んで「自閉症」とひとくくりにするようになったらしく、精神医学・心理学の世界も変化が激しいものである。
自閉症は「対人コミュニケーションの困難」と「こだわり・常同行動」で特徴付けられるが、専門家でないと診断は難しいようである。
本書は自閉症に関する基礎研究に重点を置いて書かれている。自閉症を通してみると、むしろ「普通の人(定型発達者)」の心の働きの不思議さが見えてくるというのも面白い。
社会にゆとりが出来てくると、こうしたいわゆる「発達障害」が障害ではなくて「個性」とみなされるようになるという未来に期待して本書は終わっている。考えてみると、自閉症は反社会的ではないので、自閉症という個性を生かせる社会になることが確かに望ましいと思える。