英語の冠詞の使い方をわかりやすく解説してある本。ただし、マンガも使ってあって、読みやすいレイアウトにしてあるという意味ではわかりやすい一方で、羅列的であるという意味ではそんなにわかりやすいわけでもない。本当はもうちょっと突っ込んだ解説もほしい。
著者は Thayne 氏ということになっているが、元は日本人が書いているのではないかとかなり疑われる。私が冠詞について今まで一番勉強になったと思う本は、Mark Petersen「日本人の英語」「続日本人の英語」(岩波新書)なのだが、そこで書かれている例で本書に出てくるものがいくつかある。それらを読んだ日本人が書かないとこうはならないんじゃないかという気がするのだ。セイン氏著ということになっている英語の本は最近山のように出ているので、チームで手分けして書いているのであろう。
やや気になったことが2つ
- pp.207-208 all ~ not の形を全面否定として取り上げている。私の理解では、ここで出ている All the employees don't know this. のように all が not の前に来る文は使うのは薦められなくて、 None of the employees know this. にしないといけない。本書では後者のほうが自然だが、前者も全面否定だと理解できるとしてある。 手元の文法書(安井稔「英文法総覧」1982)によると、all ~ not の形は全面否定と部分否定のどちらであるかが曖昧であり、 全面否定は比較的最近出てきた使い方とのこと。
- pp.48-50 「集合名詞」の範囲が曖昧である。 手元の文法書(安井稔「英文法総覧」1982)によると、「集合名詞」とは、単数形でも複数のものだと感じられて複数形の構文で使うものである。たとえば、people や police にそのような使い方がある。しかし、ここで出ている例の He has gray hair. では単純に hair は 不可算名詞(物質名詞)ととらえるべきだと思う(手元の辞書には「集合的」とは書いてあるが)。もう一つ出ている fish も 単複同型ととらえることもできる。ただし、ネット検索すると「集合名詞」の境目はけっこう曖昧で、hair や fish も集合名詞ととらえる向きもあるようである。