「東大話法」と「立場主義」をキーワードに、原発事故とその処理に代表される機能不全がどのような態度に起因しているかを説明している本。著者の関連本の入門編という位置づけで、わかりやすく、すぐに読み終わった。著者が話したことをフリーライターがまとめるという方式で書いたもののようで、なるほど読みやすいはずである。
東大話法というのは、エリートに蔓延する欺瞞的な話し方で、以下のような特徴があるそうである。言われて見ればなるほどで、テレビの報道番組などはこういうものであふれかえっている。自分がこういうふうにならないように気をつけないといけない。
1 自分の信念ではなく、自分の立場に合わせた思考を採用する 2 自分の立場の都合のよいように相手の話を解釈する 3 都合の悪いことは無視し、都合のよいことだけ返事する 4 都合のよいことがない場合には、関係のない話をしてお茶を濁す 5 どんなにいい加減でつじつまの合わないことでも自信満々で話す 6 自分の問題を隠すために、同種の問題を持つ人を、力いっぱい批判する 7 その場で自分が立派な人だと思われることを言う 8 自分を傍観者と見なし、発言者を分類してレッテル貼りし、実体化して属性を勝手に設定し、解説する 9 「誤解を恐れずに言えば」と言って、嘘をつく 10 スケープゴートを侮蔑することで、読者・聞き手を恫喝し、迎合的な態度を取らせる 11 相手の知識が自分より低いと見たら、なりふり構わず、自信満々で難しそうな概念を持ち出す 12 自分の議論を「公平」だと無根拠に断言する 13 自分の立場に沿って、都合のよい話を集める 14 羊頭狗肉 15 わけのわからない見せかけの自己批判によって、誠実さを演出する 16 わけのわからない理屈を使って相手をケムに巻き、自分の主張を正当化する 17 ああでもない、こうでもない、と自分がいろいろ知っていることを並べて、賢いところを見せる 18 ああでもない、こうでもない、と引っ張っておいて、自分の言いたいところに突然落とす 19 全体のバランスを常に考えて発言する 20 「もし●●●であるとしたら、お詫びします」と言って、謝罪したフリで切り抜ける
このような東大話法が蔓延する原因として、著者は「立場主義」という概念を作った。東大話法とは、自分の『立場』に最もふさわしい話をでっち上げることなのである。日本社会では立場が重要視される。基本的なルールは以下の3つとのこと。
1 役を果たすためには、なんでもやらなくてはいけない 2 立場を守るためには何をしてもいい 3 人の立場を侵害してはいけない
とはいえ、私たちはどっぷりこういう社会の中につかっているわけで、うっかりすると気付かずに取り込まれている。難しいものである。