アドラーは、フロイトやユングと並ぶ心理学の巨人だそうな。フロイトやユングよりずいぶん明朗な心理学だということを始めて知った。トラウマだとか後ろ向きのことを言わず、前向きにどう生きるかが書かれていて力強い。著者(岸見氏)の『嫌われる勇気』はベストセラーになって、最近日本でも広く認知されるようになったようである。
放送を聴いてみると、普段から漠然とそういうことだろうと思っていたことが明確で尖鋭な形で述べられていて、まさにその通りだと思った。自分に当てはめてみるとそうである。私も若いころは劣等感に悩まされていた。年をとってくると、自分にある程度の自信も持てるし、自分の居場所もわかってくるので、心が安定してくるけれど、そうなる前はやはり悩みが多く、まさにアドラーが言っているようなことを漠然とわかるようになりながら、大人になってきたと思う。
しかし、やや疑問なのは、精神的にかなり問題を抱えているような学生に接するときである。そのような学生にアドラーのような厳しい考え方をそのまま押し付けてよいのかどうか、悩ましい。心理カウンセラーのような人は、どちらかといえば、ポイントに正面からぶつからないように、少しずつソフトにソフトに接することを勧めることが多いように思う。
あとは、子育ての問題も難しい。アドラーは、褒めず叱らず、と言っていて、これは実は半分くらいは良くわかる。学生を見ていても、褒められたり叱られたりしないと行動ができなくなっている例があり、これは今まで褒められすぎたり叱られすぎたりしたのだなということがわかる。しかし、一方で我が子を見ると、褒めたり叱ったりしないとしょうがないなと思うこともあり、難しいものである。なお、学生に対しては、私は比較的褒めず叱らずである。でも、それが合わない学生もやはりいる。