地球と生命の46億年史

著者丸山茂徳
シリーズNHK カルチャーラジオ 科学と人間 2016 年 4~6 月
発行所NHK 出版
刊行2016/04/01(発売:2016/03/25)
入手福岡天神のジュンク堂書店福岡店で購入
読了2016/07/01
関連 web pageNHK ストリーミング

こういうラジオ番組はテキスト読み上げになりがちなのだが、放送で著者はかなり奔放に話をしていた。内容も著者のごく最近の考えを反映していて刺激的で楽しいし、勉強になる。もちろん定説でないことも多いが、そこが面白い。

最後に世界の未来の話までし始めるのが著者らしいといえば著者らしいのだが、その部分はちょっと粗雑過ぎてあまりまとまりがなかった。

ところで、今期から「カルチャーラジオ」はweb 上でストリーミングでも聴けるようになった。聞き逃しても後から聞けるので便利になった。

放送時のメモと放送テキストのサマリー

第1回 科学とは何か?

科学の法則性
確実な予言能力がある法則からもっとあいまいな法則までいろいろある。
反証可能性
例外が出てくると、それを包摂するようなさらに広い枠組みの科学が生まれる。
Charles Darwin
アンデスの高い山に化石を見つけて、造山運動に気付く。
進化論を始める。ダーウィンフィンチの発見。
学問の発展
生物に名前を付ける(リンネ)→図鑑を作る→分類をする→進化に気付く
微生物に気付く→微生物の図鑑を作る→分類をする(遺伝子)→人工生命
惑星の記載→惑星の分類→惑星探査と系外惑星の発見→普遍的な惑星形成理論
一般的に言えば、「発見→記載(図鑑)→分類→総合化体系化」
宇宙生物学の時代
宇宙には惑星がたくさんあることがわかってきた→生命も普遍的であるに違いない
特殊から普遍へ

第2回 太陽系と地球の誕生

太陽系の形成
われわれの銀河系とアンドロメダ銀河はやがて衝突する。その間にはあまり何もないが、矮小銀河が複数ある。
太陽系も、銀河の衝突に伴うスターバーストに伴ってできたのだろう。
地球の水の起源 ABELモデル (Advent of Bio-Element Landing)
地球は snow line (太陽から 2.7 AU) より内側で出来たので、最初はドライだったはずである。
地球の酸素同位体比は、enstatite chondrite というドライな隕石と合致する。 一方、地球の水の酸素同位体比は、carbonaceous chondrite という隕石と合致する。 つまり、地球は最初ドライで出来て(45.3 億年前)、あとで水を含んだ隕石がやってきたと考えることができる (44 億年前)。
後期に隕石がやってくるのは、昔木星と土星とあと一つ大きな惑星があって、それらの相互作用による擾乱が起こったときに比較的外側にあった小惑星が落ちてきた、と考えることができる。
古い zircon のセリウムの 3 価と 4 価の比を見ると、地球は最初は還元的で、あとで酸化的なものがやってきたことがわかる。
後からやってきた物質から深さ 4km の海ができた。
地球は最初ドライで、シュライバーサイト Fe3P という非常に還元的な鉱物があった。これに、酸化的な大気・海洋成分がやってきたので、酸化還元反応が起きて生命の元となった。
海の役割
海があって初めてプレート表層に含水鉱物が含まれるようになるので、プレートテクトニクスが起こるようになる。
地球の海の量は絶妙で、多すぎると陸がなくなるし、少なすぎるとプレートテクトニクスが起こらなくなる。海が多くなりすぎなかったのは、巨大惑星の影響で彗星のようなものがそれほど多く降ってこなかったため。
陸にある岩石や鉱物は多様だったはずで、それが生命に必須の物質を供給した。

小話コーナー

講師たちは系統的に地球史を研究するために国際的な研究を行ってきた。そのときの冒険談を少しずつ話す。

ソロモン諸島のマライタ島の調査をした。マラリアが蔓延していた。専門家の研究によると、蚊は手足の根元とか首とかを咬むらしい。ホテルで軽装になるときが危ないそうだ。蚊だけではなくて、毒蛇が危ない。学生が蛇に咬まれて大変だった。

第3回 生命の誕生

生命はいつ生まれたのか?
46 億年前の地球には大気も海洋もなかった。地球も月と同じようにドライだった。
44-42 億年前に大気と海洋の材料物質が降ってきた。数 100 km サイズの天体が月に衝突して、月の海ができた。 このような大きな小惑星が地球にも衝突してきた。衝突で飛び散ったものは雪のようにたまる。 一連の衝突で 2 億年かけて地球の半径は 10km くらい増え、深さ 4km の海ができた。
生命とは何か
生命の要件は、膜、代謝、自己複製の3つ。
代謝=エネルギーを取り出す、自己複製=子孫を作る。
その前に、材料として、C, O, H, N が必要。この元は大気と海洋。
それ以外の材料として、P, K などが必要。これの元は岩石。
物質循環の流れが必要。その駆動力は結局、太陽。
地球生命はどこで生まれたのか?
太陽、陸、大気、海洋が必要。けれども初期地球は大気が分厚くて太陽の光が直接届かない。
生命が生まれたのは、自然原子炉間欠泉のところ、というのが講師の最新説。 その放射能のエネルギーで有機物ができる。間欠泉で、地下の物質が地表に出てくる。
間欠泉の周囲の岩石と水とが反応すると、還元的なガスができる。放射線によって有機化合物が出来てくる。 できた有機化合物は、間欠泉によって地表の酸化的環境に放り込まれる。
やがて太陽が見えるようになると、太陽エネルギーが使われるようになる。
これまでは、海が生命を育んだと考えられてきた。しかし、初期の海は猛毒である。超酸性で塩分濃度は高く、重金属に富んでいた。
最初の生命
一番最初の前駆的生命体は、膜に包まれた 20 種類の蛋白質。そのようなものが間欠泉の地下で生まれた。
太陽が見えるようになると、そのエネルギーを使うようになる。しかし、夜は太陽が使えないので、FeS2 などの電子の貯金箱を使う。
毒の海から身を守るために、細胞の壁を丈夫にした。現在、壁がない生物が本当に作れるかどうかという実験がなされている。
海は徐々に無毒化してゆく。それとともに、毒から身を守ることができた古細菌と真正細菌のみが生き残った。

第4回 太古代~生命サバイバルの時代

太古代
40 億年前から 25 億年前
原初大陸の消失
太古代の激しいマントル対流によって構造浸食が起こり、原初大陸は消失した。
今でも付加体はそれほどなくて、構造浸食の方が多い。
原初大陸は、アノーソサイトや KREEP 玄武岩であった。
原初大陸がなくなったので、生命は、栄養塩供給を断たれ、良い生存環境を失った。
原初大陸はマントルの底に沈んだ。原初大陸には放射性熱源がたくさん含まれているので、熱くなり、ダイナモの駆動源となった。
新しい陸地と第二大陸
プレートテクトニクスが始まると、安山岩や花崗岩ができはじめる。これらも構造浸食によって、沈み込む。 沈み込んだ花崗岩は、マントル遷移層に集積して第二大陸となる。
光合成生物の誕生
シアノバクテリアが生まれて酸素を出すようになった。
海の中の酸素が増えて、鉄が酸化され、縞状鉄鉱床ができた。
太古代末期のマントルオーバーターン
マントルの温度が高いときは、二層対流だった。
二層対流の結果、上部マントルは冷めて、下部マントルは暖かくなった。その結果、26 億年前にオーバーターンが起こった。
26 億年前には洪水玄武岩が全球的規模で大量にできた。これがオーバーターンの観測的証拠である。
上部マントルがコアまで落ちると、コアが急激に冷やされる。その結果、地球磁場が強くなる。 [吉田注:磁場強度が急増したという話は古地磁気学的にはあやしい。]
太古代末期には大陸面積が増えて磁場が増えるので、生命が増えた。

小話コーナー

ここで話していることは、著者たちの 30 年にわたる国際的な研究の成果である。

これまで、地球全体の歴史などとても調べることができないと思われていた。80 年代中ごろから徹底的に文献を読んで、一番調べると面白いところをピックアップしてそこの調査をした。まずはポケットマネーから研究を始めた。

横軸 46 億年でいろいろなグラフを描いてみると、それらの連関が見えてくる。

第5回 極端な原生代~2回の宇宙変動と生命進化

全球凍結
原生代には2度の全球凍結が起こった。原生代初期の 23 億年前と末期の 7-6 億年前である。
原生代初期の全球凍結の後には真核生物が生まれ、末期の全球凍結の後には多細胞生物が生まれた。
全球凍結の証拠には、ドロップストーンが低緯度地域で見つかったということがある。古緯度は古地磁気の俯角から推定する。
全球凍結が起こる理由
火星は現在全球凍結状態にある。金星は灼熱の大地である。
気候変動を理解する鍵は雲である。宇宙線が大量に降り注ぐと、雲がたくさん出来る。雲を決めるパラメタは、宇宙線強度と太陽活動と地球磁場。
23 億年前と 6-7 億年前はスターバーストの時代だった。とくに 23 億年前は大きかった。スターバーストが起きると、ヘリオスフェアが縮んで銀河宇宙線が大量に降り注いだ。6-7 億年前は地球磁場が弱かったこともからまって宇宙線が多く降り注いだ。宇宙線によって雲がたくさんできるようになった。これが、全球凍結の原因である。
全球凍結と進化
この全球凍結の時代をだいたい境にして、酸素も急増している。
リフトバレーのようなところには、放射性元素をたくさん含むマグマが出ているところがある。 そういうところでは遺伝子の変異がたくさん起きて、局所絶滅が起こるとともに新しい生物たちが生まれる。

小話コーナー

研究リーダーの持つべき資質

第6回 カンブリア紀の生物の爆発的進化

巨大大陸の出現
「水漏れ地球」(水がマントル深部まで吸い込まれる)になったため、海水準が下がって巨大大陸ができた。
巨大な大陸があったのは、地球史の最初の6億年と最後の6億年。
堆積物の量が6億年前に急増する [Ronov ら]。それは、大陸が増えたことを意味する。
著者らのグループはジルコンの年代と量を調べた。これからも6億年前に地球に大きな陸地が出現したことがわかった。
変成岩を調べると、沈み込み帯の温度が年代とともに下がってきたことがわかる。地下 30 km の温度が 650℃よりも低下すると、含水鉱物が上部マントル深部に持ち込まれるようになる。
深発地震は、含水鉱物の脱水分解によって起こっている。深発地震は、水が遷移層まで持ち込まれている証拠。
水漏れ地球 Leaking Earth の帰結
水がマントルに入るようになる→海水準が下がる→陸地が増える→大陸の巨大河川を通じて栄養塩が大陸棚に運ばれる→生物が大量発生する→有機物が堆積物に閉じ込められるようになって、大気中の酸素が増える→オゾン層ができる→生物の上陸
陸からは栄養塩が運ばれる。だからこそ、今でも海洋生物は大陸の近くにたくさんいる。
生命の急速な進化
7.6 億年前;最初の動物である海綿が出現した(放送)。
6.35 億年前;マリノアン全球凍結が終わり、大陸からの栄養塩供給が急増して、最初の動物である海綿が出現した(テキスト)。
5.8 億年前;ガラキアス小氷河期の直後、硝酸塩の供給が増加して、エディアカラ生物群が出現する。
5.5 億年前;栄養塩供給が急増、酸素が急増、カルシウムが急増して、硬骨格生物が誕生。捕食者が出現。
5.4 億年前;小氷河期でエディアカラ生物群が大量絶滅。南中国のリフト帯に閉鎖的な海ができて、硝酸塩が急増。 カンブリア紀の生物群(アノマロカリスなど)が本格的に出現する。
5.4 億年前から 5.2 億年の間にカンブリア紀の大爆発が起こり、動物のほぼすべての門が現れる。
今日のまとめ
生命の進化の原動力は、まとめると、スターバースト、磁場の弱化、海水準変動であった。

小話コーナー

化石の話

私たちの祖先はピカイアということにふつうはなっているが、これはカンブリア紀中期のバージェス頁岩動物群の動物である。南中国にもっと古いカンブリア紀前期の化石がたくさんみつかった。そこにはすでに魚がいた。

化石の発見者の多くはアマチュア。しかしその功績がまだ十分に認められていない。

第7回 古生代~生命の黄金時代の到来

今日の話のあらまし
大陸の離合集散、動植物の大進化、古生代末の大量絶滅
大陸の離合集散
パンゲア超大陸が南北に伸びていた。海はパンサラッサと呼ばれる。
5 億年前にはゴンドワナ超大陸があり、その前の超大陸は 10 億年位前のロディニア。
塩分濃度の変化
10 億年前の海水は、塩分が非常に高かった(現在の5倍)。このような海では、細胞膜が柔らかい動物は住めない。
海水準が下がって大きな大陸ができることにより、岩塩ができるようになる。そうなって初めて、塩分が減り、動物が海に住めるようになった。
塩分が現在の 2 倍を切ったのは 6 億年くらい前で、そうなってからエディアカラ動物群が出現する。
動植物の大進化
5.4 億年前に脊椎動物が生まれた。古生代末には哺乳類が生まれた。
古生代に最も繁栄したのは三葉虫。三葉虫は目を持っていた。
古生代には、シダ植物、裸子植物が出てきて繁栄した。
陸上生態系の基盤は、土壌微生物で、これは先カンブリア時代からいた。
古生代末の大量絶滅
地球史上最大の絶滅で、90 % 以上の種の動物が死んだ。
細かく見ると、2度の大量絶滅があった (2.6 億年前と 2.52 億年前)。
寒冷化、洪水玄武岩の噴出、地磁気逆転頻度の増加、酸素の減少が起きた。
1度目の絶滅は急激な寒冷化、2度目は極端な貧酸素化が重要な原因であることがわかっている。
そのような環境変化の最重要な原因はよくわかっていない。
最近、絶滅の究極的な原因は、暗黒星雲と太陽系の衝突ではないかという説が出てきた。

小話コーナー

地球史七大事件(最近は二十大事件としている)のようなことを考えてきた。事件の重要性の度合いを評価する必要がある。 生命の起源や進化にとって重要な節目を選ぶ。今のバージョンの二十大事件は未来を含んでいる。

第8回 中・新生代~哺乳類の誕生と進化、恐竜の大繁栄と絶滅

中・新生代
中生代と新生代は本質的にはそれほど違わない。体のつくりの違う動物が現れたわけではなく、恐竜が絶滅しただけ。
中・新生代の特徴は哺乳類の大発展である。
昆虫と被子植物が共進化で大躍進をした。
哺乳類の進化と大陸移動
哺乳類は、ローラシア獣類(北米・ヨーロッパ・アジア)、南米獣類、アフリカ獣類、有袋類の4つのグループに分かれる。 これは、パンゲア超大陸が分かれて、1億年くらい前にローラシア大陸、南米大陸、アフリカ大陸、南極+オーストラリアの4つになっていたことに対応している。
霊長類の進化
霊長類が誕生したのは、1 億万年前で、おそらくアフリカの南端近いところだろう。
[吉田注:著者は、霊長類の進化も大陸分裂と関係付けてストーリーを作ろうとしているが、先ほどの哺乳類全体の進化の話とは整合的でない。 そういう議論をするには、時期尚早なのではあるまいか。]
進化で大事なのは3つの環境: (1) 物理的環境(温度など) (2) 化学的環境(栄養など) (3) 生物的環境(捕食者など)
植物の進化
古生代には、まずシダが繁栄し、後半になると、裸子植物が繁栄した。中・新生代になると被子植物が繁栄するようになった。

小話コーナー

恐竜は隕石衝突により絶滅した。現在では、小惑星が地球にぶつからないようにする技術の開発が進んでいる。

第9回 生命進化の新理論

これまでの進化論
Darwin の適応進化、自然淘汰
Gould による断続平衡説;大量絶滅による進化の加速
木村資生の中立進化説
筆者らによる生命進化の新理論
新理論は3つの軸からなる:(1) 局所絶滅と HiR マグマによる茎進化、地理的孤立に続く大陸衝突による冠進化、宇宙変動による大量絶滅と進化の加速
茎進化=一本の枝が2つに分かれる。冠進化=いっせいにたくさんの枝ができる。大量絶滅=枝が消える。
茎進化 (stem evolution)
リフト帯では、HiR (Highly Radiogenic) マグマが噴出し、局所絶滅が起こり、放射線被爆により進化が加速する。これが茎進化である。
茎進化は陸で起こる。海だと、放射性元素が拡散するからである。
人類の脳の巨大化は、アフリカのリフトバレーでの茎進化によって起こった。
冠進化 (crown evolution)
大陸衝突によって、別々の大陸で別々の進化をしていた生物同士が交雑し、一気に多様性が増える。これが冠進化である。
現在インド大陸周辺の生物が多様なのは、インド亜大陸の衝突による冠進化のせいである。
大陸が分裂して孤立すると、茎進化と冠進化の中間型の進化が起こる。オーストラリアの有袋類の進化がその例である。哺乳類が、ローラシア獣類、アフリカ獣類、南米獣類に分かれているのもその例である。
大量絶滅による進化の加速
暗黒星雲との遭遇やスターバーストによって大量絶滅が起こる。空いたニッチで急速な進化が起こる。
重要なことは、ダーウィン進化のようなゆっくりした進化はバックグラウンドの進化であるのに対して、現在の生命の多様性はもっと大規模な変動が原因によるということである。

小話コーナー

熊本地震にちなむ小話。

九州では、陸の分裂が起こっている。そこで、正断層が発達する。

九州は沈み込み帯でもある。そこで、マントルに水が入るのでマグマができて、巨大カルデラができる。大量に水が入るというのが、アフリカの地溝帯との大きな違い。

地震は、水が重要な役割を果たす化学現象である。

第10回 文明の歴史と人類の未来

「第4の生物」としての人間
ヒトはほかの生物とは大きく異なる: (1) 人類は世界中に拡散した (2) 文明を作った(科学技術の発明)
人類の誕生場
人類が生まれたのは、アフリカのリフトバレー。リフト帯では HiR マグマ(原爆マグマ)が噴出していて、 リンやウランが濃集している。オルドバイ渓谷のそばには HiR マグマを出す活火山がある。
ヒトは、HiR マグマのおかげで、大脳が著しく発達した。脳容積が大きくなった時期と、HiR マグマが噴火した時期とがきれいに対応している。
大脳の発達のおかげで、ヒトでは言語コミュニケーションが発達した。
文明の歴史
文明は5度の革命を経て発達してきた。
(1) 1 万年前に農耕牧畜革命が起こった。すなわち、人間は「餌の中で生きる」ようになった。
(2) 5 千年前に都市革命が起こった。都市の諸制度ができた。職業の分化が起こり、文字が作られた。
(3) 2800 年くらい前に精神革命が起きた。宗教や思想ができた(仏教、キリスト教、儒教など)。
以上の3つの革命は寒冷化に伴って起こった。寒冷化によって人間は助け合って生きるようになった。
(4) 300-400 年前に産業革命や科学革命が起こった。以後、エネルギー消費が加速し、世界人口が爆発的に増えた。
(5) 現在は情報革命の時代である。世界が小さくなった。
世界の現在と未来
今や、地球の生態系は人工生態系となった。今の生態系はヒトだけが数が増えている。
遠い将来には人口は減るだろうが、当面は増える。2020-2050 年くらいには人口のピークという人類史上最大の試練が訪れる。まずは、食糧増産が必要である。
エネルギー問題は、シェールガス採掘で、当面はクリアしている。
人類がやがては絶滅することを考えると、人類は自己複製するロボットを作らねばならない。

小話コーナー

津波は海底地すべりで起きる。これまでは、上盤プレートの反発が原因であるとされてきた。東北地震の後でも、地すべりによる土砂の堆積が見つかっている。だから、津波を制御するには、地すべりがおきそうなところを予め崩しておけば良い。

第11回 宇宙に生物はいるか~アストロバイオロジー

地球生物の普遍性と特殊性
地球の生物に普遍的な性質:C, H, O, N を主要元素とする。細胞から構成される。
生命においては、糖、蛋白質、核酸が膜に包まれて、代謝や自己複製を行っている。
生命が生まれる条件
Habitable Trinity = 大気 (C, N)、海洋 (H, O)、大陸 (P, K など)。これに太陽がエネルギーを与えてくれる。
地球のような生命が生まれる条件は 34 個ある。それを整理すると3つのグループに分かれる。第1グループは、生命が誕生する惑星の条件、 第2グループは、大型多細胞生物に進化するための条件、第3グループは、文明を持つための条件。
この条件に鑑みて、宇宙に生物はいるのか?たとえば、エウロパはどうか?大気がないから C や N が供給されないので、生命はいないだろう。
系外惑星はどうか?水がありさえすれば生命が生まれると考える人も多いが、そんなことはない。上記のように条件が多いので、それほどないはず。
海の量も大事。大陸が顔を出していないといけない。そんな条件を満たすのは難しい。

小話コーナー

植民地科学発展の法則(アメリカのバサラ):植民地科学の時代(お雇い外国人)→独立科学の時代(自分たちで科学ができるようになる)

いまや輸出科学ができる。

第12回 21世紀の日本の課題

世界への日本の登場
工業の中心の移り変わり:イギリス→ドイツ→アメリカ→日本→中国
日本の成功の要因:軍事にお金を掛けずに、経済中心に投資できた。
実業と虚業
実業=物質的な豊かさ、虚業=精神的な豊かさ
虚業ばかり繁栄して実業が衰退すると、国家が崩壊する。
組織の本能
組織は 90 年で崩壊する。
第一世代は実業で苦労して成功する。第二世代は高い教育を受ける。第三世代になると虚業を選ぶ。
明治体制 (1868-1945) は 80 年足らずで崩壊した。戦後体制は、2030 年代頃に崩壊するだろう。
日本の将来
これからは、知識の体系化が重要。現代は、細分化された知識が膨大にある知的カオスの時代。
政府は少子高齢化対策をしているが、日本は食料自給率にあわせた人口にしないといけない。 世界人口も減少させなければならない。 2050 年が世界人口のピークで、それからは減っていくであろう。 日本は人口減少時代の先取りをした社会設計をしないといけない。
シェールガスで、エネルギー問題は先送りされた。しかし、解決されたわけではない。
社会のインフラを再構築して、世界に輸出しよう。
マスコミの影響で、若者が虚業を目指すようになった。しかし、マスコミの役割で重要なことは、知識の整理である。
日本を世界のお手本に出来るような社会にしよう。新しいパラダイムを世界に普及しよう。

第13回 21世紀の人類の課題~世界統一国家への道

人類史における5つの革命
(1) 農業牧畜革命 (1万年前) …食料の中で暮らす
(2) 都市革命 (5千年前) …国家の誕生
(3) 宗教革命 (2.8千年前)
(4) 産業革命 (350年前)
(5) 情報革命 (現在) …コンピュータとネットワーク
イスラム国の問題
いろいろな問題がからんでいる。情報は世界に瞬時に伝わること、富の集中、知的カオス、宗教 etc。
世界統一国家への道
民主主義国家どうしは戦争をしないだろう。
アメリカは世界の警察をやめようとしている。
情報革命によって、世界統一国家の夢が可能になってきている。
民主主義が浸透しているヨーロッパでは EU ができた。
民主主義を成立させるには、自由だけでなく資本主義経済が必要。
貧富の差をどう解消するか?

小話コーナー

世の中には偉人もいれば、極悪人もいる。多様性が重要。天変地異でも絶滅しないためには、多様であることが必要。