コンピュータ対プロ棋士の「電王戦」のうち、2015 年に行われた「電王戦 FINAL」開幕直前に至る様子を取材した記事である。 電王戦には関心があったので、だいたいの様子はフォローしていたから、するすると読めた。
電王戦の第 2 回、第 3 回と FINAL は、コンピュータプログラム5つとプロ棋士5人の団体戦である。 第 2 回、第 3 回はコンピュータ側が勝ち、FINAL はプロ棋士側が勝った。FINAL ではプロ棋士側が勝ったとはいうものの、 コンピュータの上位のプログラムの実力は、平均的なプロの力をもはや上回っている。 若手棋士は、もう自然にコンピュータを利用して実力向上を図るという時代になっている。
本書は、技術的なことはあんまり書いてなくて、ヒューマンなことに重点を置いて書かれている。 プログラマたちと棋士たちのそれぞれの個性を楽しめる。私のように将棋そのものは良く分からない人向けである。
最初のほうで、これまでのコンピュータ将棋の進歩についてまとめられているのをかいつまんでメモしておく。
- 1974 年、瀧澤武信らによってコンピュータ将棋が始められる。
- 1990 年、第1回コンピュータ将棋選手権。
- 1990 年代前半、ソフトがアマチュア初段程度の力になる。
- 2005 年、保木邦仁が Bonanza を発表。機械学習と全幅探索で、将棋ソフトのブレークスルーとなる。
- 2006 年、Bonanza がコンピュータ将棋選手権優勝。
- 2009-2010 年、伊藤英紀がクラスタ並列化に成功し、そのソフトを「ボンクラーズ」と名付ける。
- 2010 年、女流プロ第一人者の清水市代が「あから2010」に敗れる。
- 2011 年、「ボンクラーズ」がコンピュータ将棋選手権優勝。
- 2012 年、引退棋士の米長邦雄が「ボンクラーズ」に敗れる(第 1 回電王戦)。
- 2013 年、第 2 回電王戦。2014 年、第 3 回電王戦。