認知症をつくっているのは誰なのか 「よりあい」に学ぶ認知症を病気にしない暮らし

著者村瀬孝生・東田勉
シリーズSB新書 334
発行所SBクリエイティブ
刊行2016/02/15(初版第1刷)
入手九大生協で購入
読了2016/04/03

認知症介護の本なのだが、著者は認知症という言葉がそもそも不適切だとしている。というのは、普通の加齢に伴う「ぼけ」を病気ということにしてしまっているからだ。実際、近年の認知症患者数の増加はいくら長寿化が進んでいるからとはいえ異様としか言いようがなく、何かがおかしいと感じる。介護の仕事をしている著者の村瀬氏によれば、認知症と呼ばれる年寄りの中で、本当に脳の病気と見られる人と加齢によるぼけの人の割合は8対2くらいであると感じるという(p.84)。医師はそのような違いをちゃんと区別できないのではないかと疑っている。

認知症という「病気」にしてしまう問題点の一つは、薬漬けになることである。著者によると、抗認知症薬には怒りっぽくなるという副作用があって、それを抑えるために向精神薬を飲ませるということが起こって、かえって悪くなる例が多いそうだ。しかも、抗認知症薬には増量規定というのがあり、患者によって効き具合が違うにもかかわらず、誰でもある期間の後に増量しないといけないということになっているという他の薬にはない奇怪な規定があるのだそうな。これを読むと精神科というのは業界全体として不健全なのではないかという感じを受ける。

以上の社会的な問題はともかくとして、著者の村瀬氏のようにいろいろ工夫をしながら献身的に介護の仕事をしている人がいるということに頭が下がる。村瀬氏の言葉より(pp.162--163):

人は「できる自分」と「できなくなる自分」を精神的にも肉体的にも「行ったり来たり」しながら老いていくように思えます。そこにどう具体的に付き合い、支援していくのかが問われているように思えるのです。