熊本地震に関する土木建築系雑誌(日経アーキテクチュア、日経ホームビルダー、日経コンストラクション)の記事をまとめたもの。写真が多くて熊本地震の被害の様子がビジュアルにわかる。
大きな地震のたびに似たような被害が起こるわけだが、熊本地震の特徴として書かれていることで、目に付いたところは以下の通り。
- 揺れが極めて大きかった。益城町においては、木造家屋に被害を与える 1--2 秒周期では、 速度応答スペクトルが 170cm/s 程度 (KiK-net 益城) と兵庫県南部地震神戸海洋気象台での記録に匹敵し (p.50)、加速度応答では 3 G (宮園震度計) と兵庫県南部地震 JR 鷹取の記録を超えた (p.56)。長周期地震動 (1.6-7.8 秒) においては、熊本県内で階級4(速度応答スペクトルが 100cm/s を超える)を記録した。これは、気象庁が 2013 年に長周期地震動観測情報提供を始めてから初のことである (p.51)。
- 最近10年くらいで起きた地震の中で最も揺れが大きかったので、「2000 年基準」住宅に対する試金石になった。「2000年基準」に沿って建てられたと見られる住宅の中にも大きな被害を受けたものがあった。その理由として考えられることとして以下のようなことがある。
- 基準ぎりぎりで設計してある。その上で、たとえば外装材に重いものを使っていたりすると、 耐震性が落ちる。耐震等級を 3 (1.5倍) にしてあれば大丈夫。[pp.80-83]
- 壁の位置や量に配慮が足りない。たとえば、1 階と 2 階の耐力壁の位置が揃っていないとか、外壁が重いとか、筋交いのバランスが悪いなど。[pp.92-93]
- 金物選定や耐力壁の施工が不適切。[pp.82,94]
- 阿蘇では火山砕屑物が堆積しているため、10--15 度くらいの低い傾斜地でも大きな地滑りが起きている。[pp.122-125]
複数の記事をまとめているため、同じ場所の写真が複数個所で使われている例があるのに気付いた。たぶん目立つ例だということだと思うので、気付いた3例をメモしておく。
- 熊本市東区健軍本町付近の4階建てビル [p.44 写真 4, p.133 写真 8]。最初の記事では、ピロティ形式が弱いという例として出てくる。次の記事では、谷埋め盛り土のところにあった例として出てくる。おそらく、建築様式と地盤の2つの要素が合わさって、周囲に比べて被害が大きくて目だったのだろう。
- 益城町の赤い外壁の住宅 [p.80, p.93 写真 2]。いずれの箇所でも、2001 年に建てられた新しい住宅であるにもかかわらず、外装材が重くて潰れた例として出てくる。盛り土地で地盤も悪かったようだ。
- 益城町の寄棟造の住宅 [pp.78-79 の住宅 B、p.93 写真 3]。いずれの箇所でも 2007 年に建てられた新しい住宅であるにもかかわらず、筋交いが折れたり切れたりしている例として出てくる。最初の記事では、基準の再検討が必要だという文脈で出てくるのに対し、次の記事では筋交いのバランスが悪い例として出てくる。盛り土地で地盤も悪かったようだ。