海底資源大国ニッポン

監修平朝彦・辻喜弘・上田英之
シリーズアスキー新書 218
発行所アスキー・メディアワークス
電子書籍
刊行2012/06/11
入手電子書籍書店 BOOK☆WALKER で購入
読了2016/05/02

国産海底資源 バブルの内幕

本誌編集西澤祐介・松浦大・高橋由里
電子版編集制作茨木裕・筒井幹雄
シリーズ週刊東洋経済 eビジネス新書 No.72
発行所東洋経済新報社
電子書籍
刊行2014/08/18(Ver.1)
初出『週刊東洋経済』2014 年 6 月 21 日号
入手電子書籍書店 Sony Reader で購入
読了2016/05/02

一方(アスキー新書;以下 A)は、海底資源はバラ色という JAMSTEC と JOGMEC の宣伝本で、もう一方(東洋経済 eビジネス新書;以下 T)は、海底資源ダメダメ論というまあ極端な組み合わせである。A を先に読んで、T を後から読んだ。A を読んでいるときは、こんなバラ色なことを書いて良いのかなと心配になり、T を読んで、案の定こう書かれちゃうよねえと思ってしまった。まあ T で言われるほど全否定する必要もないとは思うが。

A の方は監修者には偉い人が名前を連ねているものの、書きぶりから見て本人が書いたのではなく、JAMSTEC と JOGMEC に雇われたゴーストライターが書いたのではないかと思われる。あまりにも JAMSTEC と JOGMEC の宣伝をし過ぎているからである。

日本は海に囲まれているから、海洋資源の探査を行っておいて、いざとなれば使えるように準備をしておくのは必要なことであろう。しかし、T に書かれているように海底資源の採掘は難しいので、すぐには採算が取れるようには出来ないというのも、これまた当然であろう。長い目で見て調査をしておくという程度のことしかあるまい。資源開発はリスクも大きいので官主導になるのもやむをえないが、官主導になると慣性が大きいので、うまくいかなくてもずるずる続きがちになるという問題点がある。

以下、A で挙げられている資源と T による評価をまとめておく。

メタンハイドレート
(A) 東部南海トラフだけで 1.1 兆 m3 の天然ガスがある。採掘方法としては「減圧法」が良い。
(T)「減圧法」では砂が混じってきたりして、技術的にうまくいかない。さらに、採掘に要するエネルギーが大きく、そもそもエネルギー資源として成り立たないかもしれない。
石油・天然ガス
(A) 現在でも北海道・秋田・新潟で少し生産されている。これから大きな海底油田が発見される可能性もある。
海底熱水鉱床
(A) 金・銀・銅・鉛・亜鉛・鉄などが採掘できる。沖縄トラフでの資源量はおおよそ 5000 万トン。
(T) 沖縄や小笠原の鉱床は銅の品位が低く、資源量が少ない(今まで確認されているのは 340 万トン)。
マンガン団塊
(A) ハワイ諸島南東沖の「マンガン銀座」には 200-340 億トンのマンガン団塊がある。
(T) 1981 年から 1997 年にかけて「マンガン団塊採鉱システム」プロジェクトが行われたが、結局採算が取れるものにはならず、頓挫した。結果として税金の無駄遣いだった。
コバルト・リッチ・クラスト
(A) 海山を覆っており、成分はマンガン団塊に似ているが、コバルトを多く含む。拓洋第5海山は有望。
レアアース資源泥
(A) 東大の加藤泰浩教授のグループが発見。レアアースの品位が高く、南東太平洋と中央太平洋を合わせると陸上埋蔵量の 1000 倍。