本屋で見かけて読んでみた。週刊誌的なものなので、予想されるとおり中身は薄い。地震予知問題の構造をきちんととらえているかといえば、やはり表面的である。一つの理由は、本書 p.10 で「本書のテーマで取材に応じていただける地震学者の方を探すのには本当に苦労しました」と書かれているとおり、あまり取材がうまくいっておらず、島村英紀氏への取材のみに頼る結果になってしまったことだと考えられる。地震学者が取材を嫌がるのは当然だから、本格的に取材をしようと思ったら、時間をかけて地震学者とつきあってからでないと無理だろう。でも、著者のジャーナリスト・ライターの人々もこればっかりやっているわけじゃないからそんな暇は無いのだろう。そうすると、内容が薄くなるのも当然か。もう一つの理由は、地震予知問題は、行政と地震学者のもたれあいの結果なので、行政や政治の側にも綿密に取材をしないと全貌がわからないはずなのだが、それをあまりやっていない感じがすることである。
私にとって参考になるのは、地震調査研究予算の推移や内訳が書かれている部分である。私にはこういう億単位を超える予算の妥当性は判断できないが、どういうところにお金が行っているのかがよくわかる。この妥当性に関しては島村英紀氏の判断が掲載されている。島村氏は専門家だから一面では妥当なことを言ってはいるのだが、しかし、島村氏のご意見だけでは、どうしても一面的になってしまう。