内田氏流の気持ちを楽に保って生きるための生き方指南のような本である。素直にさっと読めた。文庫版あとがきによると、もともとは「語り下ろし」だったらしい。しかし、しゃべったものをそのまま本に出来るわけもなく、結局は書き直したそうだ。それでも、何となく気楽に読める感じがするのは、もともとが「語り」だったせいだろう。
目次に沿って大雑把にまとめると以下の通り。
- I 心耳を澄ます
- がんばりすぎない、自己の一部分でしかない局所的な欲望だけを充足しようとせず自己全体を考える、人間関係で我慢せず逃げる
- II 働くことに疲れたら
- 家庭も仕事も子育てもというサクセスモデルには無理がある、公のために働く、愛想よく振舞う、リスクを取る、交換がコミュニケーションのの本質、戦後民主主義は戦争と動乱を経験したリアリストが作った
- III 身体の感覚を蘇らせる
- 本当に個性的な人間は少ない、日本人の倫理性を担保しているのは「型」である、身体的・動物的な直感の重要性、武道はスポーツではない
- IV 「らしく」生きる
- 伝統的には身分や職業と身体作法の型が密接に結びついていた、型による棲み分けを行うのが良い、「らしく」型に則って生きる
- V 家族を愛するとは
- 家族の基盤を愛にするのはしんどい、核家族は不自然なシステム、家庭でも「らしく」振舞う