『人生論ノート』の解説。
正直に言えば、ピンと来ない感じだった。もともと系統的な論考ではないせいかもしれない。
やはり哲学というものは、もうちょっと系統的でないと、全体としてどう考えてよいのか良く分からない。
元の本を読んでないから何ともいえないけれど。
「100分de名著」放送時のメモと放送テキストのサマリー
第1回 真の幸福とは何か
- 『人生論ノート』
- 1938-1941 年に「文學界」に断続的に連載された哲学エッセイをまとめたもの。
- 三木清の生涯
- 1897 年、兵庫県揖保郡生まれ。田舎から出て、第一高等学校に入学する。
- 西田幾多郎『善の研究』に感動し、哲学の道を志す。京都帝国大学文学部哲学科に入学。1922-1925 年、ヨーロッパ留学。
- 法政大学に職を得たが、治安維持法で検挙されて大学を去り、在野の哲学者となる。
- 1932 年、主著『歴史哲学』刊行。
- 終戦の年の1945年、三木は治安維持法で逮捕され、終戦の一か月後に獄死。
- 幸福論の復権
- 当時、幸福論がほとんどないことを嘆き、幸福論の復権を謳っている。
- 時代背景としても、第二次世界大戦直前で、幸せを論じづらい時期であった。
- 三木の幸福論
- 「幸福そのものが徳である。」幸福は、徳であり力である。
- 成功と幸福とは同じではない。幸福は各人にとってオリジナルなものである。
- 成功は量的なものであるのに対して、幸福は質的なもの。成功は過程に関わるのに対して、幸福は存在に関わる。
- 幸福は知性で考えるもの。
- 「機嫌がよいこと、丁寧なこと、親切なこと、寛大なこと、等々、幸福はつねに外に現れる。」
- 人生は希望である。
- 「失われる希望というものは希望ではなく、却って期待という如きものである。」
第2回 自分を苦しめるもの
- 虚栄
- 虚栄は人間的なものである。虚栄は人間が社会的であることの反映である。
- 虚栄心は対世間的である。一方、名誉心は自己の品位についての自覚である。
- 虚栄への対処:
- 虚栄を徹底すると、仮面が自分になる。
- 虚栄を小出しにする。
- 創造的な生活のみによって虚栄から逃れることができる。創造とは、フィクションを創ることである。
- 怒り
- 怒りには、神の怒り、名誉心からの怒り、気分的な怒りの3つの段階がある。神の怒り=公憤。
- 憎しみは避けなければならないが、怒りは必ずしもそうではない。持続的に憎しむよりは、カラッと怒る方が良い。
- 自信のある者は怒らない。
- 嫉妬
- 人は想像力によって嫉妬する。
- 嫉妬は平均化を求める。自分を高めずに、対象を低めようとする。
- 自信があれば嫉妬しない。個性的な人間ほど嫉妬しない。
- 偽善
- 精神のオートマティズム=自分で判断せず、判断を他人に委ねる。
- 道徳の社会性=個人よりも社会を重視、上から押し付けられる道徳。これに異を唱えないのが偽善者。
第3回 「孤独」や「虚無」と向き合う
- 虚無と自己形成と秩序
- 虚無は人間の条件である。それは「海は泡が存在するための条件である」と同様の意味である。
- 生命とは虚無をかき集める力である。生命は虚無からの形成力である。=自分が生きていく意味は自分で作って行く。カオスから秩序を作ってゆく。
- 現代では自分は無数の無名の人々と繋がっている。人は多くの人と繋がっているのに、無名の存在になる。現代人は、このような中で形を作っていかなければならない。
- 虚無から何かを作る力を構想力という。混合の弁証法=矛盾を抱えこんだままの弁証法。異質なものを受け入れる。そのためには秩序が必要だ。温かみのある(=心に合致する)秩序が必要。
- 外的秩序は力で作れるけれでも、心の秩序は力では作れない。秩序は、心の秩序に合うものでなければならない。無理強いはできない。
- 秩序を構築するには、土台となる価値が必要。単なる多元主義ではアナーキーになる。基盤となる価値は、人間の尊厳を認めること。
- 孤独と知性
- 孤独は街にある。孤独は間にある。
- 孤独に耐えることが大切。知性は孤独である。周囲に流されない。
- 知性は主観的で人格的。
- 感情は煽動することができるが、知性は煽動できない。
第4回 「死」を見つめて生きる
『人生論ノート』は、「死」に始まり「希望」で終わる。
- 死
- 死は観念である。つまり、生きている間は死を経験できないから、頭で考えるしかない。
- 死がだんだんと怖くなくなった。死んだら、死んだ人に会えるかも知れない。
- 執着があるから死ねる。三木は悔いだらけで死んでも良いと言っている、と著者は解釈する。
三木は、妻のことをずっと考えていた。つまり、心の絆があれば、死んでも残された人が憶えていてくれる。
- 過去
- 過去は死せるものとして絶対的。過去を改竄してはいけないと言っていると、著者は解釈する。
- 三木自身の死
- 敗戦の年、三木は、逃亡犯をかくまった罪で逮捕され、戦後も釈放されず獄死した。
- 旅について
- 「旅は絶えず過程である。」
- 「人生そのものが実に旅なのである。」
- 希望について
- 「人生は運命であるように、人生は希望である。」
- 三木は、最後まで人間の可能性と希望を信じていた。希望こそが生命の形成力。
- 三木は、理想主義者だった。