経済の観点から世界史の流れを読み解くという本で実に興味深い。最近は独自の観点で歴史を見るという本がいろいろ出版されていると思うが、これもその一つである。何が書いてあるかは目次を見るだけでだいたいわかる。
序 「お金の流れ」で読み解くと、「世界史の見え方」はガラリと変わる! 第1章 古代エジプト・古代ローマは“脱税”で滅んだ 第2章 ユダヤと中国――太古から“金融”に強い人々 第3章 モンゴルとイスラムが「お金の流れ」を変えた! 第4章 そして世界は、スペインとポルトガルのものになった 第5章 海賊と奴隷貿易で“財”をなしたエリザベス女王 第6章 無敵のナポレオンは“金融戦争”で敗れた 第7章 「イギリス紳士」の「悪徳商売」 第8章 世界経済を動かした「ロスチャイルド家」とは? 第9章 明治日本の“奇跡の経済成長”を追う! 第10章 「世界経済の勢力図」を変えた第一次世界大戦 第11章 第二次世界大戦の“収支決算” 第12章 ソ連崩壊、リーマンショック――混迷する世界経済
最初のうちは、繁栄した国は徴税システムが優れていた、すなわち、多過ぎない税金をきっちりと徴収していたというような話で牧歌的なのだが、中ほどになると、イギリスは海賊と奴隷貿易で儲けたなんていう話がでてきて、ヨーロッパは汚いものだと驚く。近現代というのは全く汚いものである。それ以前から汚い話はあったのだろうが、だんだん規模が大きくなっているのが困ったものである。
第2次世界大戦へのアメリカの参戦も、著者によれば金のせいである。最初は参戦するつもりはなかったのだが、ドイツが1940 年、欧州新経済秩序を打ち出したので、アメリカはヨーロッパ市場を失うことをおそれて参戦した。さらに、日本が 1938 年、東亜新秩序を宣言したので、アメリカは日本が東アジアを支配し大きな経済力をもつことをおそれて中国への支援を始めた。要するに、当時世界一の経済大国になっていたアメリカは、経済的な支配力を失う危機を感じたときに戦争に向かったのである。アメリカの体質が今でもこうしたものであることは、しょっちゅう中東で戦争を起こしていることからもわかる。
最後は、現代がフランス革命前夜に似ているという動乱の予感で結ばれる。フランス革命の背景には以下のようなことがあった。(1) ヨーロッパは戦争続きだったので、国家財政は破綻していた (2) 貴族には免税特権があったりして、貧富の差が拡大していた (3) 徴税請負人の不正が、国家財政を悪化させ、貧富の差の拡大も悪化させていた。現代も、とくに世界規模で貧富の差が広がっているというところが似ているというわけである。