地震に関する授業を1回分受け持つことになったので、下調べの気分で読んだ。
活断層の専門家だけあって、活断層と地震の関係に関する非常に充実した解説書になっている。
活断層に関しては、だいたいどんなところまでわかっているのかがよくわかる。
熊本地震を受けて書かれたものらしく、熊本地震に1章が割かれているのが特筆すべきことである。
けっこう細かいこと(前から分かっていた断層の位置と今回確認された断層の位置がわずかにずれることとか、
正断層と横ずれ断層でスリップパーティショニングが観察されたとか)まで書かれていて、
私のような半専門家(地震や活断層の専門家ではないけど、地震学の基本的な素養はある)にも勉強になる。
図や写真が豊富なのと、参考文献がきちんと付けてあるのが読みやすい。
気付いた問題点
第1章の中の「断層には3つのタイプがある」(pp.23--26) は断層の基本的なことの解説なのだが、基本的すぎてざっと書いてあるせいか、不用意なところや分かりづらいところが何箇所かあった。
- p.23 の応力の説明で、「プレート運動が遠因となって地殻内で生じる圧力と考えてください」とあるのだが、
応力と圧力は専門用語としては区別しなければならないので(圧力は応力の一部)、たとえば学生が「応力は圧力だ」と書いたら誤りである。
むろん著者は、一般向けなのでということでそれを承知の上で分かりやすいと思って書いたに違いないのではあるが、専門用語としてははっきり誤りになる表現を使うのはいかがなものかと思う。
- p.23 「このような震源断層の動きを「メカニズム」と呼ぶことがあります。」において、「このような」が何を指すのかが不明確。
- p.26 「引張場というのは、この鉛直方向からの荷重圧が、水平方向からの圧力よりも大きな場合のことです。」の「この」が指すものが書かれていない。