地球は火山がつくった 地球科学入門

著者鎌田 浩毅
シリーズ岩波ジュニア新書 467
発行所岩波書店
刊行2004/04/20、刷:2013/11/25(第9刷)
入手九大図書館で借りた
読了2017/05/05

富士山大噴火と阿蘇山大爆発

著者巽 好幸
シリーズ幻冬舎新書 419
発行所幻冬舎
刊行2016/05/30(第1刷)
入手九大図書館で借りた
読了2017/05/05

地球惑星科学コースではない大学1年生に防災に関する講義を少しだけすることになって、火山に関する本を紹介しようと思い、 最近のものをと思って読んでみた。タイトルや目次などから選んでみたのだが、実際に読んでみて、 いずれも大学初年次の学生に紹介するのに相応しい本であることがわかった。

鎌田氏の本は中高生向けなのだが、高校の地学教育が壊滅している現状では、大学生にも中高生向けの本を薦めるのが良いと思う。 実際この本は、「地球科学入門」という副題からも分かるとおり、火山に関するいろいろな側面をバランス良く配置してあって、 地学コースではない大学生が読むのにはちょうど良いと思った。従来の地学の教科書にありがちな岩石の細かい分類などの話はせずに、 むしろマントル対流の話に進んでゆくのが大局的な構造がわかって好ましい。著者が体験した伊豆大島三原山の噴火の話に始まり、 マントル対流で終わるという構成は首肯できる。反面、私が読んで新しいことは少なかったのだが、それはむしろ基本的なことを バランスよく書いてある証拠でもある。私にとって新しかった知識は、著者の研究である猪牟田(ししむた)カルデラ噴出物の話などであった。

巽氏の本は、巨大カルデラ噴火をメインにしたもので、九州大学の学生にはぜひ知っておいてほしいことである。 巽氏は最近巨大噴火に関して鬼界カルデラの探査をしようとされていて、その宣伝も兼ねていると思われる。 巨大カルデラが九州と北海道に集中している理由に関して、著者の最近の説が紹介されている。 それによれば、九州と北海道は地殻の歪が小さい、すなわち地殻の粘性が大きいことが重要で、 それによりマグマと周囲の固体の粘性コントラストが大きくなり、流紋質マグマでも分離しやすくなることが 巨大マグマだまりができる理由だとしている。私には今ひとつ納得できない意味もあるのだが、 かと言ってそれに代わるアイディアも無いので、とりあえず拝聴しておく。

両方の本で「マグマ」の語源に触れているところがあるのがおもしろかった。鎌田氏の本では p.24 で、「ギリシャ語の「濃い液体をこねる」に由来する。」と書いてある。 巽氏の本では p.144 に、あるとき質問されて慌てて調べたところ「「糊」のようにネバネバした物を表すギリシャ語」とわかったと書いてある。