著者がこれまでの著作のサマリーとして、日本が軍事的には米軍の支配下にあることをはっきり示した本である。 日本は、サンフランシスコ講和条約によって一応独立したかに見えるが、軍事的にはいまだに米軍の支配下にある。 それを知ると、愕然とするものの、事実なのだからしょうがない。
本書は読みやすく書かれているので、数日ですぐに読めてしまった。とくに各章のサマリーは4コママンガになっていて、 そのマンガは上記出版社の web page で誰でも見られるようになっている。各章のタイトルとそのマンガを見れば、 それぞれの章に書いてあることがすぐわかる。
- 第1章 日本の空は米軍の支配下にある。
- 第2章 米軍は、日本においては治外法権である。
- 第3章 米軍は、日本全国好きなところに基地が作れ、その基地を使って好きなように軍事活動をして構わない。
- 第4章 日本で最も重要なことは、米軍人と日本のトップ官僚からなる日米合同委員会が決めている。
- 第5章 米軍の権利は、終戦後ずっと密約によって守られている。
- 第6章 米軍に関する問題は、憲法の縛りを受けない。
- 第7章 重要な文書はまず英語で書かれる。憲法9条も国連憲章に基づいてGHQが書いたものである。
- 第8章 自衛隊は米軍の指揮の下に戦う。
- 第9章 朝鮮戦争以来、法律の論理の上では、米軍は国連軍の代わりという形で日本に駐留している。
本書を読んで、とくにメモしておきたくなったことを以下に記しておく。
(1) 米軍の日本駐留を可能にしている法的なロジック(第9章)
アメリカは常に国際法を自国に都合の良いように使うことに気を配っている。国連憲章第43条では、
国連加盟国は(まだ実現していない)国連軍に兵力や基地を提供する義務を負う、とされる。
国連憲章第106条では、国連軍が出来るまでは五大国が国連軍の代わりを行う、とされる。
これを組み合わせると、日本は国連軍の代わりである米国に兵力や基地を提供するということになる。
これは、朝鮮戦争に際してダラスが考えた詐術的論理である。朝鮮戦争は終わっていない(現在は休戦状態)ので、
そのときの関係が今でも生きている。日本は、現在でも「占領下での戦争協力体制」の下にあるのだ。
(2) 日米指揮権密約(第8章)
自衛隊が米軍の指揮下に入ることは、日本が独立した直後、朝鮮戦争下の 1952 年に、マーク・クラーク大将と吉田茂首相らとの間で
口頭で約束された。このことが書かれた機密文書は 1981 年に古関彰一が発見して、『朝日ジャーナル』で発表した。
が、日本ではその記事は無視された。
(3) 憲法第9条と国連(第7章)
憲法前文の「平和を愛する諸国民」とは、第2次世界大戦に勝利した連合国のことを指している。
米国をはじめとする五大国が「平和を愛する」とは噴飯ものだが、もともと憲法が作られた背景には連合国が作った国連があるのだからしょうがない。
憲法9条は「正規の国連軍」の創設が前提となっている。しかし、それはいまだに作られていない。
(4) 北方領土返還の不可能性(はじめに)
北方領土が返還される可能性は無い。なぜなら、米国は日本のどこにでも基地を作ることができるので、
もちろん北方領土にも米軍基地が置かれる可能性があるからである。
そのような状況になる可能性があることをロシアが認めるわけがない。
(5) 日本の空はすべて米軍に支配されている(第1、2章)
日本の空には横田空域と岩国空域という米軍管理空域があることが最近一般にも知られてきた。
今年(2017年)、トランプ大統領が訪日したときは、横田基地に来た。2016年、オバマ大統領が広島訪問をしたときには、岩国基地に来た。
しかし、さらに恐ろしいことには、日本全土の空が米軍に支配されているという言い方もできる。
日本の航空法特例法第3項には、米軍機には航空法第6章が適用されないという規定があり、日米合同委員会の密約では、
米軍機には優先的に管制権を与えるとされているからだ。たとえば、2010 年に嘉手納空域が返還された後も、
沖縄本島をほぼすべて覆うように arrival sector という米軍専用空域が設定されるとともに、那覇空港の管制所には退役軍人が常駐して、
嘉手納空域返還を無意味にしている。今後、オスプレイが日本全国で低空飛行訓練を行い、いずれ事故を起こすであろう。