お正月読書第2弾。コンピュータ将棋ソフトで最近長らく日本一だったポナンザの作者による囲碁将棋AIのやさしい解説である。数式もない一般向けの解説なのですぐに読めた。
こういう問題を考えていくと、人間の知能や知性とは何かという問題に行き当たるのが面白いところである。囲碁にしても将棋にしても、強い人には弱い人が持っていない勘がある。しかし、その勘が何かと言われると、強い人本人もそれが何であるかわからない。しかし、コンピュータが強くなってから考えてみると、その勘とはディープラーニングに類似のものではないかとも思えてくる。近年のディープラーニングが得意な領域は画像の判断で、これを用いてコンピュータ囲碁が飛躍的に強くなった。そのことから、やや飛躍を持って考えると、第2章で著者が書いているように、知能の本質は画像なのではないかというふうにさえ思えてくる。さらには、ここでいう「黒魔術」である「ドロップアウト」も時々忘れることの重要性を示唆しているのかもしれない。
しかし、あまりディープラーニングと人間の知能を似たようなものだと考えすぎるのが誤りであることも明らかである。たとえば、コンピュータが人間に勝てるようにするには、人間が学習するよりもはるかに多くの棋譜を学習させないといけないところを見ると、人間よりも学習効率は良くないようである。ひとつの理由として考えられるのは、巻末の鼎談で議論されているようにコンピューターには論理を操る能力がないことがある。それが学習効率を落としている原因にもなっているだろう。
つまり、コンピュータはこれまでに、計算能力と画像判断能力を身につけた。人間に比べてあと足りないのは、上記のように論理を操る能力のようである。そこまでいくと、本当に知性のようなものが出来るのかもしれない。