名探偵コナンコレクション コナン&大和敢助

著者青山 剛昌
シリーズMy First BIG
発行所小学館
刊行2019/11/20(初版第1刷)
入手福岡徳永のセブンイレブン福岡徳永店で購入
読了2019/12/14

「名探偵コナン」のコンビニ向け再編集版をつい買ってしまった。以下、それらのメモ。

「名探偵コナン」では、なぜか長野県警には格好良い刑事・警部ら(大和敢助、諸伏高明、上原由衣、黒田兵衛)が配置され、 お隣の群馬県警には「ヘッポコ」の山村ミサオがいる。長野県警の登場回は このページにまとめられている。本書は、そのうちの2回(大和敢助・上原由衣の初登場回と諸伏高明の初登場回)を載せている。 諸伏高明は、長野県警新野署警部で、「所轄の高明(=諸葛孔明)」と呼ばれている。

事件のサマリー

事件名Files登場人物事件の概要 or 関連事項
59風林火山 [迷宮の鎧武者/陰と雷光の決着]5 百足、6 鎧武者、7 兵法、8 風林火山、9 戦、10 陰と雷
  • 虎田直信:虎田家当主
  • 虎田義郎:殺された虎田家跡取り、直信の姉の息子で養子
  • 虎田達栄:直信の妻
  • 虎田繁次:直信の息子
  • 龍尾為史:龍尾家当主
  • 龍尾康司:殺された龍尾家の娘婿
  • 龍尾盛代:為史の母
  • 龍尾景(あきら):為史の息子、流鏑馬の名手
  • 龍尾綾華:景の妻
  • 甲斐玄人(くろと):流鏑馬の名手で巡査だったが、殺された
  • 虎田由衣:義郎の妻、旧姓上原、元刑事

毛利小五郎に、虎田直信から息子(義郎)の死の謎を解いて欲しいという依頼がある。義郎は竜巻に巻き込まれて死んだ。 しかし、そばに百足の死骸が置かれていたことから、瀕死の義郎を見殺しにした人がいると推測された。

一方、虎田家と敵対する龍尾家でも息子(康司)が殺されており、服部平次にその謎を解いてほしいと依頼していた。 康司は、体を縛られた上、土に埋められて撲殺されていた。そこにも百足の死骸が置かれていた。

6 年前には甲斐玄人が死んだ事件があった。流鏑馬の練習中に崖から落ちたという。しかし、即死ではなく、 大怪我で動けなくなったまま落ち葉に覆われて放置されたための餓死だった。

夜、虎田家の一室に泊まっていた蘭と和葉は、武田信玄の諏訪法性の兜をかぶった鎧武者の影を障子の向こうに見たという。 龍尾綾華がそれを聞いて急に怖がりだし、行方不明になる。探してみると、森の木の枝から首を吊られて死んでいた。猿轡をされ、 足元には百足の死骸が置かれていた。しかし、周囲に足跡がなく、どうやって吊ったのかわからなかった。

武田信玄の伝令役を「百足衆」といった。これが百足の由来だろう。さらに、これまでの殺人は、 風林火山と対応しているように見える。義郎は「風」、康司は「山」、綾華は「林」である。

龍尾景が流鏑馬の練習をしていると、怪しげな人々が潜んでおり、的の位置がずらされていた。隣村の連中の仕業らしい。 以前の祭りのとき、甲斐巡査が的を外したときも、的の位置がずらされていた。

虎田繁次が、山で宝探しをした後、両親、小五郎、蘭、和葉と帰っているとき、目を放した隙に、繁次が踏み切りの近くの電車の先で 燃えていた。彼は、釣竿で架線に触れて感電死したと見られた。近くに百足の死骸が置かれていたから、これも連続殺人の一環のようで、 風林火山の「火」に相当すると見られた。

近くから発見されたメモ帳は、義郎、繁次、康司、綾華の交換日記を兼ねているようだった。それによると、6 年前、彼らは甲斐玄人の 馬を花火で驚かせて、甲斐に怪我をさせようとしていたようだった。ところが、馬が崖から落ちて甲斐が死んでしまった。 これが本当なら、連続殺人は繁次が罪滅ぼしに犯したもので、最後に自分の命を絶ったものとも考えられた。

実は、孫子の風林火山には続きがあった。「難知如陰/動如雷霆」すなわち「陰」と「雷」だ。繁次の死は「火」ではなく「雷」、 甲斐の死が「陰」であると考えられた。とすれば、まだ「火」の殺人が残っている。由衣、大和、平次、コナンはそのことに気付き、 本当の犯人である虎田達栄が龍尾景を殺しに来るのを待ち受けた。果たして彼女はやってきた。甲斐を殺したのも彼女だった。 猟銃を馬の足元に撃ったのだった。連続殺人の動機は、流鏑馬の賭の邪魔になるからだった。 彼女は直信の後妻だから、義郎も繁次も彼女の子ではない。綾華の死体の周囲に足跡がなかったのは、馬で運んだからだった。 繁次は、手帳を電車の架線に引っ掛けることで慌てさせ、釣竿を使わせて殺した。 由衣、大和、平次、コナンの活躍で、達栄とその仲間の火を点けに来た連中は取り押さえられる。

敢助と由衣は幼馴染で、好き合う仲だった。由衣が義郎の嫁になったのは、敢助が行方不明になったのを死んだと思い込み、 甲斐巡査の死の謎を自分で解こうと思ったからだった。

65,66死亡の館、赤い壁 [三顧の礼/掌中の物/死せる孔明/空城の計] 8 赤い壁、9 掌中、10 死せる孔明、11 生ける仲達(ちゅうたつ)を走らす、1 絶妙好餌
  • 明石周作:イラストレーター、「赤」
  • 翠川(みどりかわ)尚樹:俳優、「緑」
  • 小橋葵:小説家、「青」
  • 山吹紹二:ファッションデザイナー、「山吹」
  • 百瀬卓人:CGクリエーター、「桃」
  • 直木司郎:ミュージシャン、「白」

大和警部が「希望の館」で起きた事件に関して、毛利小五郎に捜査協力を求める。そこで、大和警部、上原由衣刑事、 小五郎、蘭、コナンは「希望の館」に向かう。大和が頼りにしているのは、本当は小五郎ではなくコナンのようだ。

「希望の館」の今は亡きオーナーは、かつて館に自分が見込んだ才能ある若者を住まわせていた。それが、明石、翠川、小橋、山吹、百瀬、直木の6人だった。 6人は名前の音に入っている色で呼ばれていた。5、6年前からは、明石と小橋葵の夫婦だけが住んでいた。

3年前に小橋葵が倉庫で心臓発作を起こして亡くなった。そして明石が最近、2階の部屋に閉じ込められて餓死させられていた。 その部屋の壁の一つの面は赤いラッカーで塗られていた。部屋の真ん中には白と黒の椅子が背中合わせで置かれており、 遺体は白い椅子に座っていた。そしてその正面が赤い壁になっている。赤い壁はダイイングメッセージと見られるが、 死んでいたのが明石なので、「赤」と呼ばれた明石が犯人ということにはならない。

大和警部が小五郎一行に事件の説明しているときに諸伏高明警部が現れる。大和警部、諸伏警部、小橋葵は同級生だった。 諸伏警部は、小橋葵が書いた小説「2年A組の孔明君」の主人公のモデルでもあった。

諸伏警部は、コナン、蘭と共に翠川、山吹、百瀬、直木を訪ねて事情を聞く。直木の言動が怪しかったので、翌日皆で直木のアパートに行って見ると、 直木は椅子の上で死んでおり、前の壁が赤く塗られていた。絞殺だった。山吹と百瀬に事情を聞きに行くと、直木はイタリアに行く予定だったらしい。

諸伏警部が「希望の館」で赤い壁の謎が解けて、大和にメールを送っているところで、何者かに襲われ、館には火が放たれる。 諸伏は上原刑事に助け出されるが、頭から血を流して気を失っている。館の前には、翠川、山吹、百瀬もメールで呼び出されていた。

犯人の動機は見当がついた。小橋葵の死の恨みである。小橋葵が死んだのは、自分の肖像画を探すために倉庫に行ったときで、 明石はそのとき自分の作品を仕上げるのに集中していて、妻の死にしばらく気付かず、妻を放置したことになった。その恨みだとすれば、 犯人が明石を部屋に閉じ込め放置したことが理解できる。

医師の手術着が薄緑色であることをヒントにして、大和、コナンは赤い壁の意味に気付く。しかし、証拠がないので、 「空城の計」で犯人を陥れようと相談する。直木の靴に大事なものが隠してあるかもしれないことを匂わせ、犯人が直木のアパートに行くように仕向ける。 来たのは、思ったとおり翠川だった。

赤い壁の謎は以下の通り。まず、明石は壁に赤い字で「ワタシハナオキニコロサレタ」と書いた。金をせびりにきた直木が それを見つけて自分のことかと思い、赤く塗りつぶした。しかし、もちろん自分が犯人ではないことは直木は知っているので、 それが翠川尚樹だということに気付いた。そこで、直木は翠川をゆすりだした。それで、翠川は直木を絞殺した。 もともと、明石は、犯人によって壁が赤く塗りつぶされるだろうことを予測していた。明石はチェス好きだった。 チェスでは白が先手で黒が後手なので、白と黒の椅子の意味は、白い椅子に座って、次に黒い椅子に座れということになる。 白い椅子に座って赤い壁を見てから黒い椅子に座って白い壁を見ると、補色残像で緑が見える。 つまりダイイングメッセージは、壁が赤く塗りつぶされることを予想しての「緑」だったのだ。

動機は予想通り、葵の死に対する恨みだった。しかし、翠川が知らなかったことがあった。葵が亡くなったとき、明石は 葵の誕生日に向けてこっそり葵の肖像画を描いていたのだった。