生協書店店頭で見かけて買った。学生がべき乗分布に関係した研究をしているので、 それをわかりやすく語るとどういうことになるかが書いてあるのかと思って読んでみた。 実際読んでみると、本書はべき乗分布よりは対数正規分布に重点が置かれている。 それは一般にそれほど知られていない割に重要ということのようだ。 べき乗分布の方は、なかなかその起源を明確に言うのは難しいらしい。
最近、格差社会ということがよく言われるが、対数正規分布がそれを判定する一つの手段を 与えてくれるというのが、本書の重要なメッセージになっている。これは目から鱗というものである。 格差というと、たとえばジニ係数が用いられたり、エンゲル係数が用いられたりする。 ジニ係数は、皆の所得が同じという状態を基準にしてそこからのずれを測る。 エンゲル係数は、平均的な貧困度のようなものを測定する。 これに対して、この本で書かれている考え方は、 人々に対数正規分布程度になるような格差ができるのは正常とみなし、 そこからのずれを異常と考えるというもので、格差の見方として私にとっては新しかった。 本書に書かれている通り、たとえば税金の取り方としてどの程度の累進性が適切かを考える目安となりそうだ。