ピノッキオはもちろん子供のとき読んだはずだが、簡略版を読んだのかどうか覚えていないし、
筋書きもあまり覚えていなかった。今回の解説を聞いて、そういえばそういう場面があったと
ところどころ思い出した部分があった。
全体的には、子供の成長物語だけど、解説を聞くと、当時の時代背景やら、
作者の気持ちの乗り方が連載の途中で変わっていくことやらがわかって面白かった。
「100分de名著」放送時のメモと放送テキストのサマリー
第1回 統一国家とあやつり人形
著者カルロ・コッローディ
- 1826年 フィレンツェ生まれ。
- 1848年と1859年のイタリア独立戦争には義勇兵として参加。
- 1871年 イタリア統一。
- 国家統一後、「国語」の確立の必要性のため、児童書が求められる。そこで、コッローディは児童書や教科書をいくつか書いた。
- コッローディは賭けカード遊びが好きで、借金で首が回らなくなった。子供向け雑誌で童話の連載依頼があり、
その稿料で借金を返そうということで『ピノッキオの冒険』の連載開始(1881年)。
物語の進行と解説
物語の進行 | 解説 |
- 大工のさくらんぼ親方のところに丸太がきた。
- 丸太が喋りだしたので、親方はジェッペットに丸太を譲る。
- ジェッペットがピノッキオを作り始める。
- ピノッキオはいたずら坊主。
- ピノッキオは完成するとすぐに家出する。騒ぎが起こり、警察官の誤解によってジェッペットがかわりに捕まえられる。
|
- 子供のための悪漢小説の誕生。
- 巧みな書き出し。
- 不条理なことがたくさん描かれている。不条理が、イタリアの日常だった。
|
- 家に帰ったピノッキオにコオロギが道理を説く。
- 怒ったピノッキオがコオロギに木槌を投げつけると、コオロギが死んでしまった。
- ピノッキオが反省して学校に行くと言うので、ジェッペットは自分の上着を売って、ピノッキオのために練習帳を買ってきた。
|
- ジェッペットは貧しかった。暖炉には火の絵が描かれていた。当時のイタリア人の貧しさを反映している。
|
- ピノッキオは人形芝居に興味を持って、教科書を売って入場券を買う。
- 人形たちがピノッキオを歓迎して、芝居が台無しになる。
- 怒った親方がピノッキオを燃やしそうになる。でも、ピノッキオの必死な態度に同情してやめる。そして金貨を5枚やる。
- ピノッキオをはペテン師の狐と猫に騙される。金貨を増やすには、間抜けの国で金貨を土に埋めて水をやれば良いという。
- コオロギの幽霊がピノッキオに騙されないようにと諭すが、ピノッキオは聞き入れない。
|
- 親方は搾取の象徴。でも他人に同情する気持ちも持っている。
- 狐と猫は身体障害者のふりをしたペテン師。
- 当時、身体障害者は、物乞いになるか詐欺師か泥棒になるしかなかった。イタリアの厳しい現実だった。
|
第2回 嘘からの成長
物語の進行と解説
物語の進行 | 解説 |
- 森の中でピノッキオは覆面強盗に襲われる。ピノッキオは金貨を舌の裏に隠す。
強盗に金貨を奪われそうになったので、ピノッキオは強盗の手を食いちぎる。それは猫だった。
- ピノッキオは強盗に縛り首にされた。やがて、ピノッキオは動かなくなった。
|
- これは最初の物語の結末。続きを求める読者のリクエストに応えて、連載が再開された。
|
- 仙女が登場して、ピノッキオを連れ帰る。
- 3人の医者が呼ばれる。その一人のコオロギに悪口を言われて、ピノッキオはびっくりして生き返る。
- 仙女は金貨はどこにあるかと尋ねる。ピノッキオは「なくしちゃった」と嘘をつく。すると鼻が伸びた。
|
- これまでピノッキオの鼻が伸びるのは、必ずしも嘘をついたときではない。感情が大きく揺れた時に伸びた。
- ピノッキオは生き返っても悪ガキ。
|
- ピノッキオはまた狐と猫に再会。狐はまたしても金貨を「奇跡の原っぱ」に金貨を埋めるように言う。
とうとうピノッキオは金貨を埋める。しばらくして掘り返すと金貨はなくなっていた。
- ピノッキオは裁判所に被害を訴えるが、ピノッキオは金貨を盗まれたかどで4ヶ月牢屋に入れられてしまう。
|
- 騙されたことが罪だという不条理。当時のイタリアでは法律の整備が進まず、秩序が混乱していた。
|
- 牢屋を出たピノッキオは、後悔して仙女の家に戻る。すると、仙女のお墓があった。
仙女は、ピノッキオに見捨てられたので悲しんで死んだという。ピノッキオは夜通し泣き続ける。
|
|
- ハトがピノッキオに声をかける。ジェッペットは、ずっとピノッキオを探し回っているという。
- ハトはピノッキオを連れて千キロ飛び、ジェッペットのところに連れて行く。
- ジェッペットは船に乗って遠いところに行くところだった。その船が大波に飲まれる。
ピノッキオは、必死で助けに行く。でも、ピノッキオも波に飲まれてしまう。
|
- ピノッキオがハトに運ばれて行った先は、千キロ先だということなので、北アフリカかもしれない。
統一イタリアが拡大をめざした先かもしれない。
|
ピノッキオとクオーレの比較
ピノッキオは発売(1883年)当初それほど売れなかったが、1920年代に爆発的に売れた。
新しさを旨とするファシズムの時代に、新しさがウケて売れた。
一方、クオーレは発売(1886年)されてすぐに売れた。
第3回 子どもをめぐる労働と不条理
物語の進行と解説
物語の進行 | 解説 |
- ピノッキオは夜通し泳ぎ続けてある島に着く。
- ピノッキオは、食べ物がある場所への行き方をイルカに尋ねる。イルカは、ジェッペットはサメに襲われたかもしれないと言う。
|
- サメは怪獣のように巨大だと書かれている。これは産業革命の象徴かもしれない。
- イルカが描かれているのは、進化論が知られてきたことと関連しているかもしれない。
|
- ピノッキオが行った村は、働きバチの村だった。みんなが勤勉に働いていた。誰もピノッキオに施しを与えなかった。
皆、ピノッキオに働けと言った。しかし、ピノッキオは働きたくなかった。
- やさしいお姉さん(実は仙女)が、水瓶を運んでくれたら、たくさん美味しいものをあげると言ったので、水瓶を運ぶことにした。
|
- 近代化するイタリアと児童労働。当時は、子供が働かされていた。しかし、ピノッキオは、自分は働かないときっぱり言う。
|
- ピノッキオは人間になりたいという希望を仙女に述べる。仙女は、いい子でいれば良いと言う。ピノッキオは優等生になる。
でも、悪ガキとも仲良くなってしまう。
- 悪ガキは、サメを見に行こうとピノッキオを海に誘う。でも、サメがいるという噂は嘘だった。
悪ガキとピノッキオは乱闘を始める。悪ガキは教科書を投げ始める。それが仲間の一人に当たる。ほかの悪ガキは怖くなって逃げる。
|
- ピノッキオは罪悪感に苛まれる。
- 投げつけられた教科書として、実在の教科書の名前が書かれている。自作も含まれており、一種の出版広告。
|
- 憲兵隊は、ピノッキオが仲間を殺したと決めつけて、連れて行く。隙を見て、ピノッキオは走って逃げる。
- すると、出会った老人から仲間は生きているという話を聞くが、その人はピノッキオは悪ガキだという。
ピノッキオは、ピノッキオは良い子だと言う。すると、ピノッキオの鼻が伸びる。
ピノッキオは悪ガキだと言い直すと、鼻が元に戻る。
|
- ピノッキオの冤罪。当時のイタリア社会の理不尽を反映しているのではないか。
- ピノッキオは鼻を自分で元に戻せるようになっている。ピノッキオは自分をコントロールできるようになっている。
|
- 仙女にまた許してもらって、ピノッキオは良い子になる。いよいよ明日になったら人間になれるというところまで来る。
|
|
第4回 「帰郷」という冒険
物語の進行と解説
物語の進行 | 解説 |
- ピノッキオは人間になるパーティーをすることにする。
- 悪友の「ランプの芯」はこれから「おもちゃの国」に行くと言う。そこは学校もなく遊んで暮らせるという。
「ランプの芯」はピノッキオを「おもちゃの国」に誘う。実際、皆そこで遊んで暮らした。
- 5か月経つとピノッキオはロバになった。そして、サーカス団に売り飛ばされた。
|
- 19 世紀には児童人身売買の問題があった。サーカスで働かされるとか、物乞いをさせるとか。
|
- サーカス団長は、いかに上手にロバを調教したかを滔々と語る。
- ロバのピノッキオは、足をくじいてお払い箱になり、売られてしまう。
|
- サーカス団長は、科学的なことをいろいろ言い間違えている。軟骨(cartilàgine)をカルタゴ骨性組織、医学部(medicina)をメディチ家学部と言い間違える。
|
- ピノッキオは、売られた先で溺れさせられて皮を剥がされそうになるが、またも仙女に助けられて、人形に戻った。
- ピノッキオは、大ザメに呑み込まれる。そこで、ジェッペットと会った。
- ジェッペットは、一緒に呑み込まれた貨物船にあったいろいろな食べ物を食べたり日用品を使ったりして生き延びていた。しかし、その蓄えはもうすぐ尽きるところだった。
|
- ディズニーのピノッキオはクジラに食べられるのだが、原作はサメ。
- 貨物船にあったものはけっこう豊か。近代化の象徴かもしれない。しかしその蓄えも間も無く尽きてしまう。
|
- ピノッキオは、サメから逃げようと言う。ジェッペットは泳げないので、ピノッキオはジェッペットを背負って泳ぐと言う。
- サメは喘息持ちだったので口を開けて眠っていた。そこで、二人は口から外へ出た。
- ピノッキオは溺れそうになるが、一緒にサメに呑まれたマグロが助けてくれた。マグロも逃げ出していた。
|
- マグロは哲学者。諦めていたが、ピノッキオに勇気を与えられる。知識はあるが、無気力になっている大人を表現しているのかもしれない。
- ピノッキオの冒険の目的は家に帰ることだということが見えてくる。
|
- ピノッキオは、泳ぎ着いた島にある仙女に用意してもらった小屋で、ジェッペットの看病をする。
- ピノッキオは、勤勉な良い子になる。貯金もする。
- 仙女が病気だと聞いて、ピノッキオはそれまで貯めたお金をあげることにする。
すると、翌日、ピノッキオは人間の子になっていた。
- ピノッキオは、操り人形を見つめる。最後に、人間になれた喜びを呟く。
|
- ピノッキオは前の自分も見つめる。
- これが本当にハッピーエンドなのかどうかはわからない。
- ピノッキオの後半の展開は無理やりと見えるところも無いではない。
|